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3.頭頸部がんで行われる薬物療法の管理

 頭頸部がん治療の主体は手術療法と放射線治療(radiotherapy:RT)であるが,薬物
療法は進行例に対して,RTと同時併用し治癒や再発予防や臓器温存を目的として

(p.21,Ⅰ—D—1;p.31,D—4—1)),単独では導入化学療法として喉頭温存を目的として
(p.26,Ⅰ—D—3),再発・転移例に対して延命・症状緩和などを目的として(p.35,Ⅰ—E—

1)行われている。術後化学療法もしくは追加化学療法としての化学療法単独のエビデ
ンスについては,上咽頭癌以外に確立されたものはない(p.33,Ⅰ—D—4—2))。

 頭頸部がんに用いる抗がん薬として,白金製剤(Pt)のシスプラチン(CDDP),カル
ボプラチン(CBDCA),ネダプラチン(CDGP),タキサン系薬剤のドセタキセル(DTX),
パクリタキセル(PTX),フッ化ピリミジン系薬剤のフルオロウラシル(5—FU),テガ
フール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(S—1),テガフール・ウラシル配合剤

(UFT),テガフール(TGF),抗EGFR抗体であるセツキシマブ(Cmab),免疫チェッ

クポイント阻害薬であるニボルマブなどが本邦では保険適用となっている。

 CDDPは単剤または多剤併用で,あるいはRTと併用するなどさまざまな場面で用い
られている。白金製剤は非常に重要な位置づけにあり,有効性においてCDGPと
CBDCAなど他の白金製剤と直接比較した試験はないが,CDDPがKey Drugと解釈さ
れている(p.35,Ⅰ—E—2)。
 CBDCAの使用は腎障害悪化の懸念がある場合や,支持療法として必要な大量輸液が
不適な場合に限るべきである。
 化学放射線療法(chemoradiotherapy/chemoradiation:CRT)やフッ化ピリミジン系
薬剤において重篤な口腔粘膜炎が生じることがある。抗がん薬の副作用としての悪心,
倦怠感,粘膜炎由来の疼痛による口腔内清潔保持の困難さに加え,原発巣の影響や開口
障害の合併もあり,他臓器がんよりも口腔ケアが困難である場合が多い。重篤な全身感
染症に波及することもあるため,口腔ケアについては必要性を十分に説明・教育し,治
療開始前から積極的に評価,指導,処置を行いながら重篤化を防止し,予定通りに治療

頭頸部がん治療における薬物療法の考え方と管理

B

1

頭頸部がん治療における薬物療法の意義と目的

2

頭頸部がんに用いられる薬物

3

頭頸部がんで行われる薬物療法の管理

 

総論