43
APL
Ⅰ
白血病
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解説
APLの治療において最も重要な点は,全トランス型レチノイン酸(ATRA)や亜ヒ酸(ATO)
の有効性の有無である
1)
。細胞形態や細胞化学によりAPLと診断される症例の大半はt(15;17)陽
性である。複雑核型などでマスクされる例も含めて,ATRA,ATOともに有効なPML-RARA陽
性例は98%を占める。残るわずかな症例の多くは,ZBTB16などの特定の遺伝子が17番染色体上
のRARAと転座する亜型である
2)
。ATRAの有効性は染色体転座によって異なり,t(11;17)/
PLZF(ZBTB16)-RARAとt(17;17)/STAT5B-RARAには無効である。ATOはPMLを標的と
するのでPML-RARA陽性例のみ有効である。したがって,APLにおいては,FISH法やRT-
PCR法によりPML-RARAを早期に検出することが重要である。また,M3vは形態診断が困難な
場合も多く,PML-RARAの検出は必須である。さらに,PML-RARAはその後の微少残存病変
の検出に欠かせない。地固め療法後の有無は治療方針を左右するので診断時にその有無を確認する
必要がある
3)
。
初発APLのATRAと化学療法による治療では治療抵抗例はほとんどなく,出血とAPL分化症
候群(DS)による早期死亡が非寛解の主因である
1)
。DSを予測する指標はないが,早期発見に努
めて早期治療を行う必要がある(
CQ3
)。また,頻回に凝固検査を行って出血の予防を行うことが
重要である(
CQ4
)。
APLの無病生存に対する予後因子は治療前白血球数である。ATRAと化学療法の併用における
高リスク群は白血球数10,000/μL以上である
4, 5)
。治療前血小板数40,000/μL以上は低リスク,血
小板数40,000/μL以下は中間リスクとする分類もあるが
5)
,一般に高リスクと残りの標準リスクに
分けて治療が行われる。初発例に対するATRAとATO併用療法における予後因子はまだ確立さ
れていないが,白血球数によるリスク分類により層別化治療が行われている。また,白血球数と独
立した再発の予後不良因子としてCD56陽性がある
6, 7)
。CD56陽性APLは11〜15%に認め,
ATRAと化学療法における累積再発率(cumulative incidence of relapse:CIR)はCD56陰性例
と比較してCD56陽性例で有意に高かった。
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参考文献
1) Sanz MA, et al. Management of acute promyelocytic leukemia : recommendations from an expert panel
on behalf of the European LeukemiaNet. Blood. 2009 ; 113 (9) : 1875-91.
(ガイドライン)
CQ 1
初発APLの治療開始前に行うべき検査と予後因子は
何か
FISH法やRT-PCR法によるPML-RARAの早期診断が勧められる。
臓器出血による早期死亡の予防のために頻回の凝固検査が勧められ
る。
予後因子である治療前白血球数とCD56により治療戦略を立てるこ
とが勧められる。
推奨グレード
カテゴリー2A
推奨グレード
カテゴリー2B
推奨グレード
カテゴリー1