8
解答・解説
内視鏡写真はGrade Cの重症逆流性食道炎である.逆流性食道炎が存在する
ことから胃酸逆流による過剰な食道内の酸曝露があることは明らかである.
胃酸逆流の定型症状は胸やけ,呑酸であるが,非定型症状として胸痛がある.
胃酸逆流は食後(胃内が伸展した状態)に多く発生するが,本症例は多量飲酒
後の夜間に胸痛を認めていることから,胃酸逆流により胸痛が出現した可能性
が考えられる.
プロトンポンプ阻害薬(PPI)による胃酸抑制により症状の改善が得られれ
ば,本症例の前胸部痛が胃酸逆流により起きた可能性は高い.このようにPPI
を短期間(1~2週間)内服させ,症状との関連を見るものがPPIテストであ
り,症状が胃酸逆流によるものであるかを判断するのに有用である.
本症例は重症逆流性食道炎であり,LES圧は元来低値である可能性が高い.
Ca
拮抗薬を投与すれば,さらにLES圧値が低下し,低LES圧による胃酸逆流
が発生し,症状を悪化させる可能性がある.逆流性食道炎治療の第一選択薬は
PPI
であり,約80%の重症逆流性食道炎は標準量のPPIで治癒する.
食道内圧検査は,逆流性食道炎患者の酸排出能等を評価することはできる
が,逆流性食道炎自体を診断することはできない.
よって,正解はdである.
食道癌は高齢の男性に多く,胸部中部食道に好発するという特徴をもち,扁
平上皮癌が全体の95%を占める.食道扁平上皮癌のハイリスク群としては,長
年におよぶ多量飲酒,喫煙者,男性,頭頸部癌症例,食道アカラシア,腐食性
食道炎などがある.その他,逆流性食道炎やBarrett食道は食道腺癌のリスク
ファクターとして重要である.
a. ×:食道カンジダは食道感染症のなかでは頻度の高い疾患ではあるが,通
常,カンジダと扁平上皮癌の関連性は高くない.
b. ○:腐食性食道炎は酸・アルカリあるいは重金属などの組織障害性の強い
化学物質の飲用によって起こる食道壁の損傷で,食道扁平上皮癌のリスク
ファクターである.
c. ○:食道アカラシアは下部食道括約筋(LES)の弛緩不全と,食道体部の
正常な蠕動波の消失を特徴とする一次性食道運動障害であり,食道造影や
食道内圧検査により診断される.食道扁平上皮癌の発生頻度が通常より高
率である.
d. ×:Barrett食道は食道下端の扁平上皮が胃から連続する円柱上皮で置換さ
れた状態で,胃食道逆流症(GERD)が背景にあることが多い.Barrett食
道は食道腺癌のリスクファクターである.
e. ×:食道裂孔ヘルニアは成人にみられる横隔膜ヘルニアの大部分を占め
る.胃の脱出の型によって,滑脱型・傍食道型・混合型の3種類に分類さ
れるが,食道扁平上皮癌の合併が多いとの報告はない.
問題1 解説
問題2 解説
解答
【問題1】d 【問題2】b
,
c