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第4章 がんの痛みの治療に使われる痛みどめについて
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4)フェンタニル
フェンタニルは化学的に合成して作られる薬です。製剤には、皮膚に貼ることで皮
ひ
下
か
の毛細血管から薬を吸収させて全身に作用する 貼
ちょう
付
ふ
剤
ざい
(貼り薬)、頬
ほお
の裏や舌の下の
粘膜から吸収させる製剤(口
こう
腔
くう
粘膜吸収製剤)、そして注射薬があります。貼付剤には
毎日貼り替えるものと、3日に1回貼り替えるものがあります。貼付剤は効果が長く
続く反面、痛みや副作用に応じてすぐに調整することが難しいため、痛みが安定して
いる患者さんに限って使用することが勧められます。一方、頬の裏や舌の下の粘膜か
ら吸収させる製剤はからだへの吸収が速く、効果も早くあらわれるのが特徴で、痛い
ときにとん服薬として使用します。
フェンタニルはモルヒネやオキシコドンに比べ、吐き気や便秘、眠気などの副作用
が少ないとされています。そのため、それらの副作用が問題となる患者さんに使用さ
れることがあります。また、腎臓の働きが低下している患者さんでも安全に使用する
ことができます。
5)タペンタドール
タペンタドールは化学的に合成して作られる薬です。2014年にのみ薬が日本に導
入された比較的新しい薬です。定期的に使う薬(錠剤)があります。
モルヒネやオキシコドンに比べ、吐き気や便秘、眠気などの副作用が少ないとされ
ています。また、タペンタドールの製剤には量の少ない錠剤があるため、初めて医療
用麻薬を使用する患者さんによく使われます。腎臓の働きが低下している患者さんで
も安全に使用することができます。
6)メサドン
メサドンは歴史の古い合成の医療用麻薬ですが、日本では2013年から使用できる
ようになりました。製剤には、1日に3回内服するのみ薬(錠剤)があります。モルヒネ
やオキシコドン、フェンタニルではコントロールが難しい痛みに対して使用されます。
一方で、メサドンはからだのなかに留まる時間が長く、その個人差も大きいので、
量の調節と副作用の観察を慎重に行う必要がある薬です。そのためメサドンの講習を
受けた医師のみが処方できることになっています。副作用としては、ほかの医療用麻
薬と同様に、吐き気、便秘、眠気などが生じる可能性があります。また、まれですが
不整脈があらわれることもありますので注意が必要です。