Ⅱ 石灰化浸潤性乳管癌の中間パターンの多くはこの範疇に入るが,中間パターンの範囲が問題となる。乳管内乳頭腫,乳管腺腫(ductal adenoma)などの良性上皮性腫瘍も被膜様の線維組織の状態によってはこの範疇に入るものがある。スピキュラを伴う腫瘤の代表は浸潤性乳管癌硬性パターン(図 18,19)である。少数の癌細胞からなる癌胞巣が周囲組織に浸潤性に増殖するのが硬性パターンの組織像である。硬性パターンの中には腫瘤中心部の線維化によりクーパー靱帯などの周囲の組織を引き込むものがあり,これによりスピキュラが形成される。浸潤癌の特殊型に分類される浸潤性小葉癌(invasive lobular carcino-ma,図 20,21)もスピキュラを伴う腫瘤を形成するが,後述の構築の乱れを呈するものもある。スピキュラを伴う腫瘤として認識される良性病変としては,手術瘢痕,脂肪壊死,硬化性腺症,放射状瘢痕,膿瘍などである。手術瘢痕,脂肪壊死,膿瘍は組織破壊に伴う炎症の修復機序による線維化によりスピキュラが形成される。硬化性腺症と放射状瘢痕は後述の構築の乱れで解説する。悪性を疑う微細な石灰化を指標とした生検により,非常に早期の乳癌を発見することができる。非常に早期の乳癌とは,臨床的には非触知乳癌であり,病理組織学的には非浸潤癌である。画像ガイド下針生検の進歩により,比較的容易にしかも確実に石灰化病変を採取することができるようになった。石灰化病変に対する生検の手技は非常に高い完成度を誇っているといえる。その反面,病理診断は混迷期に入っている。ホルモン依存性が多数を占める乳癌はただでさえ細胞異型が弱いものが多く,しかも乳管内の病変は良性と悪性が非常に似通った組織構築を示すので,乳管内病変の良悪性の鑑別診断は非常に難しいのである。特に平坦型の乳管内病変(図 22)は難しい。非浸潤癌を診断するためにはその周囲に位置する良性乳管内病変との病理組織学的な鑑別診断を必要とするが,この鑑別診断基準が確立されていないのである。マンモグラフィが乳がん検診に導入され,相当数の石灰化病変が発見されている。『マンモグラフィガイドライン』3)では,石灰化の形態と分布によるカテゴリー分類が行われている。分布に関しては,石灰化病変が発生して時間の経過とともに病変が広がるという時間的要素が絡んでくるので,超早期の病変に対しては適用が難しくなる。したがって形態が大切となる。形態の判断を行うに際しては,石灰化発生の機序の理解が必要となる。乳腺における石灰化をその発生機序により分類すると。① 壊死型,② 分泌型,③ 間質型に大きく分けることができる。面疱型(comedo type)乳管内癌で代表される石灰化で,癌細胞の壊死による乳管内の壊死物質への石灰沈着(図 23)である。小葉癌の非浸潤部にもみられる。形状は多形性あるいは不均一で,116 ● 9 章.病 理 2 微細分葉状,微細鋸歯状,境界不明瞭な腫瘤 3 スピキュラを伴う腫瘤 1 壊死型
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