**ABC図1 原発性肺癌(Sq,cT1cN0M0,StageIA3)症例は70歳代,女性。A:胸部造影CT;右肺下葉背側に長径2.6 cmの辺縁不整な充実結節を認め,右第10肋骨と広範囲に接しているが,明らかな肋骨破壊や胸壁への進展を認めない。B, C:呼吸ダイナミックMRI(B:吸気相,C:呼気相);腫瘍(*)は右第10肋骨(←)に対して,呼吸とともにスライドして移動している。推 奨CTで胸壁,心膜,腕神経叢,横隔膜,縦隔・心臓・大血管,椎体浸潤(T3-4診断)が不確定の場合に,肺癌のT因子病期診断においてMRIを行うことを弱く推奨する。[推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:弱(C),合意率:93%(14/15)]管支~気管分岐部浸潤の正確な診断が求められるため,CTによる診断が行われる。一方で胸壁,心膜,腕神経叢,横隔膜,縦隔,心臓,大血管,椎体浸潤の有無や拡がりのT3-4診断では,MRIがCTよりも優れると報告されており,特に肺尖部腫瘍(パンコースト腫瘍)で有用との報告が多い1-3)。また,胸壁・縦隔・心臓・大血管浸潤の診断において,呼吸性移動を利用したcine-MRIによる診断が有用との報告があり4),腫瘍と胸壁・縦隔・心臓・大血管が別々に動くことを観察できればこれらへの浸潤を否定できる(図1)。CTで腫瘍と胸壁や大血管などの縦隔構造が広く接し,浸潤が疑われる場合に適応となる。肺癌のT因子病期診断においてMRIは推奨されるか?をCQとして取り上げ,診断能をMRIとCTで比較検討し,システマティック・レビューを行った。140背 景肺癌のT因子のうちTis,T1,T2の診断においては,すりガラス状陰影・充実成分径の正確な測定や主気解 説今回のシステマティック・レビューを行ううえで,正診率,感度,特異度,費用,造影剤副作用をアウトカムとして設定した。下記に記載したキーワードを用い,肺癌を疑われている成人に対するMRIとCTのT因子病期診断能を比較している研究に関して検索を行った。費用と造影剤副作用に関して該当する論文はなかっCQ 4肺癌のT因子病期診断においてMRIは推奨されるか?
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