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心臓核医学における臨床
1
PET/CT
(FDG,
NH
3
)
5
また,融合画像評価は虚血責任冠動脈病変の同定のみならず,冠動脈瘻や起始異常など
の冠動脈奇形と虚血との関連評価にも有用である。
なお,近年のPET/CT装置ではCTの多列化が進み,CTCAの同時撮影も可能な機種
も市場に存在するが,現状の多くは高性能のCT単独機でCTCAを撮影し,ソフトウェア
を用いて融合画像を作成する手法が主流である。
(ⅳ)症例提示
(
図3
)
80歳台,女性。透析中の胸部症状の精査目的で冠動脈CTを施行したところ,右冠動脈
病変および主幹部病変を疑われ,さらには冠動脈−肺動脈瘻も偶発的に見つかった。虚血
評価目的でアンモニアPETが施行され,血流分布評価からは3枝領域の虚血がほぼ同等
に認められるが,MFRの定量評価により下壁領域の虚血が最も高度であることが判明し
た。
負荷時
安静時
負荷時
安静時
A
C
図3
アンモニアPETとCTCAとの融合画像と血流量定量結果
(A)極座標表示(CTCA融合あり):
心室中部から心尖部にかけての前壁中隔,側壁,下壁領域に中等度の虚血性血流変化を認める。定性評価上はいず
れもほぼ同程度の虚血を示している。
(B)血流量定量評価結果:
MFRは下壁領域で1.17(
)と最も低下しており,他領域よりも高度な虚血であることが示される。
(C)CTCAとの融合画像(3D表示):
側壁および下壁領域はLCXおよびRCA近位部病変による虚血と判断されたが,前壁中隔領域は冠動脈ー肺動脈瘻
(
)の遠位に虚血領域が存在しており,冠動脈病変の可能性のみならず冠動脈-肺動脈瘻の影響も疑われる。
B
領域
負荷時MBF
安静時MBF
MFR
心尖部
1.58
1.27
1.24
側壁
2.39
1.45
1.66
下壁
1.50
1.28
1.17
中隔
2.15
1.22
1.77
前壁
2.92
1.52
1.93
左室全体
2.16
1.36
1.58