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CQ

副腎腺腫の評価にどのような画像診断が役立つか?

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背景・目的

 近年,画像診断の発達・普及に伴い,他の検査目的で施行された画像検査において副腎に腫瘤性病変が偶然
発見される(偶発腫)ことが少なくない。副腎偶発腫の頻度はCT検査時の5.0%程度と報告されている

1)2)

。副

腎偶発腫の約75%が副腎腺腫であり

2)

,副腎腫瘍の鑑別診断においては副腎腺腫の診断が重要となる。本項で

は,副腎腺腫の診断における画像診断法,特にCTおよびchemical shift MRIの有用性を検証する。

解 説

 CTおよびMRIによる副腎腺腫の診断は,主に,脂質の有無と造影パターンによる2つのアプローチによりなされ

る。腺腫は細胞内の脂質の存在により,単純CTで転移性腫瘍よりも低い吸収値を呈する。Bolandらは,過去に

報告された10文献のmeta-analysisを行い,腫瘍内の平均単純CT値<10HUを腺腫とした場合の感度は71%,
特異度は98%であったと報告しており

3)

,この診断基準はAmerican College of Radiology Appropriateness 

Criteriaにおいても採用されている

4)

。単純CTによる平均CT値<10HUの診断基準を用いると,約70%の腺

腫が単純CTにて診断可能となるが,残りの約30%の腺腫の診断は困難である

3)

。腫瘍内の全てのピクセルの

CT値をヒストグラム解析し,CT値<0HUのピクセルが10%以上の存在を腺腫とした場合の感度は84〜91%と
報告されている

5-7)

 副腎腺腫は転移性腫瘍と比較し,線維性間質の少ない髄様系の腫瘍の特徴を反映し,造影剤の流出率が高い。

ダイナミックCTを用いた造影剤流出率は,①単純CTがある場合:(早期相のCT値-後期相のCT値)÷(早

期相のCT値-造影前のCT値),②単純CTが無い場合:(早期相のCT値-後期相のCT値)÷(早期相
のCT値)により計測される。その際,造影後期相のタイミングとして,造影10分後もしくは15分後の報告が多く

なされているが,Sangwaiyaらにより,後期相として造影10分後を用いると感度の低下が示唆されており

8)

,造影

後期相としては15分後が推奨される。造影1分(早期相)および15分後(後期相)の画像を用いて,それぞ
れの造影剤流出率を60%以上と40%以上を副腎腺腫として診断した場合,単純CT値>10HUであった腺腫
の診断能は,前者で感度86%と特異度92%,後者は感度82%と特異度92%と報告されている

9)

。しかしながら,

褐色細胞腫や多血性の転移性腫瘍(肝細胞癌や腎細胞癌)の造影パターンは副腎腺腫と類似しており

10)11)

,こ

れらの多血性腫瘍との鑑別においては造影剤流出率を用いた診断法には注意が必要である。
 脂質の検出という点においてはchemical shift MRIがCTよりも感度が高く,特に少量の脂質の検出に優れて
いる。定量的評価として,腫瘍の信号低下率([tumor signal intensity on in phase-tumor signal intensity 
on out of phase]÷ tumor signal intensity on in phase)もしくは腫瘍・脾信号比(tumor to spleen signal 
intensity on in phase ÷ tumor to spleen signal intensity on out of phase)を算出する手法が用いられる。
腫瘍の信号低下率が16.5%以上,もしくは腫瘍・脾信号比が71%以下を腺腫とすれば,全ての副腎腺腫は感度81

推奨グレード

A

 

CT

B

 

chemical shift MRI

副腎腺腫の診断において,単純

CT

およびダイナミック

 CT

を強く推奨する。

chemical shift MRI

は単純

CT

より高い感度を有しており,推奨する。

A

推奨グレード

B