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3.5

記録とデータ保存

3.5.1

診療録と照射録

3.5.1.1

背景,統一された記録の必要性

放射線治療が扱う悪性腫瘍,良性疾患は多岐にわたり,各領域でその取扱いが

ことなることも管理を難しくしている。最近10年で治療の高精度化が進み,診
療録および照射録は,従来の紙ベースよりも電子情報によって管理される場面が
多くなっているが,臨床で必要なのは,統一された概念,用語に基づく診療録・
照射録の記載である。

診療録に関して,最近では治療の効果判定に「RECISTの基準」,有害事象の

評価には「CTCAEの基準」が用いられるようになり,定着しつつある。記録の
基準の統一という観点においては,できるだけこれらに基づく記載が推奨され
る。診療録には,適応の判断となった根拠,効果判定,有害事象等,必要な事項
を漏れなく記載する。

照射録は,「診療放射線技師法第28条」により,法令上保存が求められている

書類の一部である。放射線治療における照射録は,(A)照射の処方に関する記
録,(B)照射の実施結果の記録に関わるものに大別される。診療放射線技師法
施行規則により,照射録には,「1.照射を受けた者の氏名,性別及び年齢」,

「2.照射の年月日」,「3.照射の方法(具体的にかつ精細に記載すること。)」,「4.指

示を受けた医師または歯科医師の氏名及びその指示の内容」を記載することとな
っている。診療録,照射録は医師法,医療法で規定される保存年限を満たすこと
が必要である。しかし,放射線治療に関するものは画像も含め永久保存すべきで
ある。

患者記録は,新たな病変が発生し放射線治療が考慮されたとき,晩期有害事象

が発生した際の診療に必要な資料となる。診療録の標準化は診療上の問題点の明
確化,医療過誤等発生の防止にも寄与すると考えられる。将来的に記載項目が一
意に正確性を以て伝達可能な資料であるよう,とくに年号については西暦,元号
の表記,数値については単位・物理量等を明示的に記載するよう配慮が必要であ
る。本章では診療記録の記載事項の必要事項をできるだけ一般に用いられる用
語,基準を用いるよう心掛け以下に記載項目を例示した。

3.5.1.2

照射録の記載項目

放射線治療指示書(例)

記載A(照射の処方に関する記録)
1.患者情報