Introduction 血液学領域の検査は,造血器腫瘍等の血液疾患はもちろん,それにとどまらない多種多様の疾患の診断において,さらには健康診断・手術前等のスクリーニングの目的においても幅広く施行されるものである.血液学的検査(ここでは,単に血液を検体とする検査と区別するためにこのように表す)は血液細胞,つまり血球の検査と血栓・止血関連の検査に大別することができるが,他の検査領域以上にバリエーションが大きい.第4章では,前者,つまり血球検査に関して取り上げる. 血球の検査には,血球の計数に加えて形態学的検査,免疫学的検査,遺伝子関連・染色体検査等,多彩かつ最新の手法・技術を必要とするものが含まれ,これらの検査を駆使することによって進歩が著しい血液疾患を中心とした診療に寄与するものである.例えば,造血器腫瘍の最善の診療には単なる疾患診断だけでなく,最新の手法を用いた病型分類,予後評価が必要であり,それによって最適な治療法選択がなされる.その重要性は,白血病診断の進歩とそれに伴う分子標的療法の目覚ましい発展の例をみるだけでも明らかである. 血液診療医の繁忙度の増加,検査の特殊性の高さにより,血液疾患の診療において血液検査室の果たす役割はますます大きくなってきている.本章で扱う血球検査は,検査結果が診断・治療に直結することが多く,血液検査室の責任はまさに重大といえる.(矢冨 裕)血球計数検査 臨床検査室には自動血球分析装置がほぼ例外なく導入されており,日常検査における血球計数に広く利用され,測定結果は各種疾患の診断,治療に役立てられている.一方,血球計数のための用手法は,日常検査では骨髄有核細胞数,巨核球数,網赤血球算定等に利用する他は,干渉物質の影響,異常低値,血球形態異常,抗凝固剤の影響等により自動血球分析装置による正確な測定ができない場合等に用いられる. A 自動測定法 血球計数の自動化は,1953年に単チャンネルのコールターカウンターモデルAが導入I血球検査4
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