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Introduction 我々の体はホメオスターシスを保つべく各臓器が連関しているが,なかでも腎臓は電解質のホメオスターシスに重要な働きを担う.腎臓がどのように電解質を調整して全身のホメオスターシスを保っているかは,尿の電解質を測定することで知ることができる.一方,尿沈渣の精査は腎臓内での病理的変化を腎臓生検することなく知ることができる簡便で,かつ安全な検査である.沈渣の重要性は古くは19世紀のBälz(ベルツ)博士の診断学にも記載があるが,最近も沈渣内にある腎臓足細胞や丸細胞が見つかり,その病態意義の研究が進んでいる.古くて新しい検査といえよう.この他に本章では,全身状態のスクリーニングには必須の尿試験紙法検査の原理,尿を用いた感染症診断,各種尿中バイオマーカーの測定方法,測定原理等,知っておくべき検査の基本が概説される.7,15章の臨床的解釈と合わせて理解を深めてほしい. 糞便検査は感染症の検査,ヘモグロビンの検出による消化器がんのスクリーニングのために広く行われてきたが,最近は炎症性腸疾患の診断,病状把握に有用なカルプロテクチンにも用いられる.今後も腸内細菌叢の研究が進むと,さらに糞便検査の有用性が高まることが期待される.(下澤達雄)尿検査 A 尿の一般的取り扱い法 1 尿の採取と尿の種類 臨床検査が取り扱う検査材料の中で最も容易に採取できる検体は尿である.ただし,採取後に速やかに検査を実施,または前処理を実施することが原則である.採尿は検査の目的により異なり,採尿時間と採尿手技(方法)により2つに大別される(表2—1). i 採取時間による分類 早朝尿(起床第1尿・早朝第1尿),随時尿(スポット尿),蓄尿(24時間尿),時間尿,負荷後尿がある.早朝尿は,早朝起床時の直後に排尿させて採取する尿であるため,安静空腹時の生体の状態を反映する.検査の利点としては,就寝中は水分採取が不可能なI尿・糞便検査2

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