Introduction 消化器は消化管,肝臓・胆囊・膵臓からなる.臓器としての特性はそれぞれ異なっているため,検査の内容も多様である. 日常診療での消化管検査は内視鏡検査が主である.内視鏡による通常の観察に加え,色素,拡大画像,特殊光,超音波等を用いた特殊内視鏡検査が進歩し,より詳細な診断が可能となった.この他,食道や胃の機能検査,Helicobacter pylori感染の診断,消化吸収機能検査,蛋白漏出性胃腸症関連の検査等が消化管検査として行われている. 膵機能検査では,膵酵素の測定が臨床的に頻度の高い検査である.古くから使用されているアミラーゼに加え,膵特異性の高いリパーゼ,エラスターゼ,トリプシン等の測定系が開発された.近年,膵外分泌機能検査は膵外分泌酵素により特異的に分解される基質を経口的に投与する方法が用いられている.形態学的な診断には,内視鏡的逆行性胆管膵管造影が欠くことのできない検査である. 肝臓は代謝・排泄・解毒・合成等,数多くの機能をもつ臓器であり,これらを評価するための検査項目はきわめて多い.日常診療では,これらの検査を組み合わせて病態の把握に役立てる.この中には健診で測定される項目も多く,臨床検査の中でも重要な領域である.ウイルス肝炎の診断や治療には肝炎ウイルスマーカーが必須である.こちらも項目数が多く,それぞれの特性を理解した使い分けが要求される(11章を参照).画像検査では,超音波検査,CT,MRI等が肝胆膵疾患の診断に汎用されている.これらの画像検査を駆使することにより,より正確な診断が可能となる. また,2021年から臨床検査技師が実施できることになった直腸肛門機能検査について新規項目として追加した. 本章では消化管および肝胆膵領域の検査について,最新の情報を加えて解説する.(梅村武司)消化管検査 消化管検査は形態学的検査と機能的検査に大別される.内視鏡やX線を用いた形態学的検査が一般に広く行われているのに対して,機能的検査はこれまで限られた施設で行われるにすぎなかった.しかし近年,食道胃逆流症(gastroesophageal reflux disease;I消化器関連検査14
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