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Introduction 臨床検査の進歩,変化は実に目まぐるしい.技術の高度化とそれに伴う専門性の深化にとどまらず,社会変化の影響も多分に受けて変容を遂げてきた.ボーダレス化やグローバル化の急速な進展は臨床検査の標準化に対する要望を一層高めている.いわゆる「働き方改革」の推進によって,昨今の医療および臨床検査体制は変化を余儀なくされてきている.今後,AIやIoTの普及が臨床検査をさらに進化させることは想像に難くない.しかしながら,たとえどんなに劇的な変化が起こったとしても,医療における臨床検査の位置付けと意義が揺るぐことはない.臨床検査は,専門性や時代に左右されることのない盤石な知識・技術基盤によって根底から支えられているからである.第1章では,そんな臨床検査全般に共通する重要事項について概説した. 冒頭に配したのは,臨床検査の標準化・精度管理・基準範囲である.いずれも,診療に役立つ検査結果を提供するという臨床検査の一義的な使命を果たす上で不可欠であり,検査技術が飛躍的に進歩したとしてもその必要性が失われることは決してない永遠のテーマである. 検査技術は日進月歩で進化し続けているが,応用されている原理が根本から変わることはまず無いといっていいだろう.現に,自動生化学分析装置は精密化,迅速化,微量化という点で目覚ましい進化を遂げてきたが,分析原理そのものは,今でも国内初の自動生化学分析装置が誕生した約70年前とまったく変わっていない.イノベーションはその基盤となる頑健な原理を熟知していなければ起こせないともいえる. 医療情勢の変化に呼応して臨床検査に関わる法が改正され,検体採取等に関して臨床検査技師の業務範囲が広がった.臨床検査技師にとっては新たなタスクが加わったことになるが,検体採取は当該検体を用いる検査全般に共通する基本的な操作であり,検査結果の質を決定づける検査の重要な一過程であることに今も昔も変わりはない. 臨床検査の進歩はまさに日進月歩である.各論の内容は,改訂作業の間にもさらなる改訂を求められることも少なくない.変化に追随していくために,まずは土台部分,すなわち総論に対する理解を深めることが肝要といえよう.(山内一由)臨床検査総論1

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