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Introduction 本章で扱う遺伝子関連検査・染色体検査は,臨床検査の中でも特に新しい分野といってよい.検体検査の品質・精度の確保に係る医療法等の一部を改正する法律(平成29年法律第57号,同年6月14日公布,平成30年12月1日施行)においては,検査分類を柔軟かつ迅速に整備できるよう,検体検査の分類を省令委任とするとともに,遺伝子関連検査・染色体検査が新たに一次分類として追加された.その中の二次分類として,病原体核酸検査,体細胞遺伝子検査,生殖細胞系列遺伝子検査,染色体検査の4つが含まれている.細菌・ウイルス等の感染症関連の病原体を解析する核酸検査はいまや感染症診療に必須になっている一方,体細胞に限局し次世代に受け継がれることのない遺伝子変異・発現を解析する腫瘍関連遺伝子検査は,分子標的療法におけるコンパニオン診断としての位置づけも加わり,その重大性はさらに増している. 一方,22対の常染色体と2個の性染色体(女性XXと男性XY)とからなっているヒト体細胞の染色体を独特な染色法で染め分けて判定する染色体検査は,先天性疾患,悪性腫瘍の領域を中心に,比較的以前より臨床応用されていたが,分子遺伝学の進歩に伴い,遺伝子関連検査と相補的な形でめざましく発展している. 本章で扱う臨床検査については社会的・倫理的側面もきわめて重要である.遺伝学的検査では,生涯変化しない生殖細胞系列の遺伝学的情報が調べられるため,検査実施時のインフォームド・コンセント,個人の遺伝学的情報の保護,検査に用いた生体試料の取り扱い,検査前後の遺伝カウンセリングの問題等,慎重に対処すべき点が多々ある.本章では,20世紀後半以降の爆発的な生命科学の進歩の粋ともいうべき先進的検査を扱うが,学問的・技術的側面だけではなく,社会的・倫理的側面も是非,学んでいただきたい.(矢冨 裕)遺伝子関連検査・染色体検査 総論 「検体検査の品質・精度の確保に係る医療法等の一部を改正する法律(平成29年法律第57号,同年6月14日公布,平成30年12月1日施行)」により,遺伝子関連・染色体検査は表12—1のように分類された.この医療法等の改正は,ゲノム医療の実用化が求められる状況で,安全かつ適切な医療提供の確保を推進するために,「遺伝子関連・染色体検査」をI遺伝子関連検査・染色体検査12

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