478 第 6 章 臨床化学検査血漿蛋白 A 血漿蛋白の種類・機能・病態 血漿中に含まれる蛋白質(6.6~8.1 g/dL)を総称して血漿蛋白というが,その種類は100以上にも及ぶ.これら蛋白質の濃度の増減,正常な蛋白質の欠如,あるいは異常蛋白の出現を調べることにより病態を把握することができる.臨床検査に利用されている主な血漿蛋白と関わる病態を表6—1に示す. 血漿蛋白は多様な蛋白質が相互に関係して,以下のような多彩な機能を発揮している.①膠質浸透圧とpHの維持 血漿蛋白の約半分を占めるアルブミンが膠質浸透圧とpHの維持に役立っている.実際に,血漿アルブミン濃度の減少は細胞内外の水の分布に大きな影響を及ぼす.またアルブミンは等電点4.9の酸性蛋白質で,血中では負に帯電し,酸塩基平衡に大きな影響を与えている.②各種物質の運搬 アルブミンは脂肪酸,ビリルビン,カルシウムやマグネシウムといった金属イオン,ホルモン,色素,薬物等,非常に多岐にわたる物質の輸送を行っている.また,毒物とも結合し,その解毒にも役立っている.特異的輸送を行う蛋白質として,血中で遊離したヘモグロビンと結合するハプトグロビン,ヘムを処理するヘモペキシン,金属イオンを輸送する蛋白としてはトランスフェリン;Fe,セルロプラスミン;Cu,ホルモンやビタミン輸送蛋白としてトランスコルチン;コルチゾール,サイロキシン結合蛋白;T4およびT3,レチノール結合蛋白(RBP);レチノール(ビタミンA),Gcグロブリン(ビタミンD3結合蛋白);ビタミンD3,トランスコバラミン;ビタミンB12等が全身に必要な物質を供給している.また,栄養指標として知られるトランスサイレチン(プレアルブミン)はRBPと複合体を形成し,レチノールの運搬を行っている.水に不溶あるいは難溶の脂質(コレステロール,中性脂肪,リン脂質等)は,アポリポ蛋白と称される脂質親和性のある蛋白質群とミセル様の複合体(リポ蛋白)を形成し,運搬されている.リポ蛋白は比重により(カイロミクロン,VLDL,IDL,LDL,HDL)に分類される(⇒ p538参照).③血液凝固と線溶 血中には血液凝固に関わる複数の蛋白質(凝固因子)(第5章 血栓・止血関連検査を参照)が存在し,血管障害等がきっかけとなって各蛋白質が連続的に活性化し,最終的にフィブリンを形成し血栓へと導く.また,これに対し同様に血中に存在するプラスミノゲンが活性化プラスミンとなり,フィブリンを溶解・除去する線溶も行われる.④生体の防御 白血球に加えて,血漿中には免疫グロブリン(IgA,IgM,IgG,IgD,IgE)や補体(C)と呼ばれる20種類以上の蛋白質が体内外の異物の排除に働いている(第9章 免疫血清検査を参照).特に免疫グロブリンは,血漿総蛋白の約1/3~1/4の濃度を占めている.⑤プロテアーゼインヒビター 血漿中には種々のセリンプロテアーゼインヒビター(アンチトロンビンⅢ,α2—プラスミンインヒビター,C1インアクチベータ,α1—アンチトリプシン,α1—キモトリプシン,α2—マクログロブリン等)が存在しており,これらは相互に関連して凝固・線溶系,補体系,I
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