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  総論

糸球体の傷害パターン(Pattern of glomerular injury)

 本規約における糸球体の傷害パターンは,各症例を代表する傷害パターンであり,従来
の組織型分類である病型分類

4,5)

に一致させた(一部はMayo/RPSコンセンサス

6)

を参考に

した)。疾患概念や病因分類との区別を明確にするために,傷害パターンは○型(○type 
injury)で表現してもよい。微小変化型,FSGS型,膜型,メサンギウム型,管内型,
MPGN型,半月体型の7型を主な傷害パターンとする(

表2

)。これを用いると傷害パター

ンと病因分類を組み合わせて「微小変化型のIgA腎症」,「MPGN型のC3腎炎」,「膜型の
移植後糸球体腎炎」などと表現することが可能である。

図19

に主な糸球体障害パターン

を分類するフローチャートを示す。

1)微小変化〔minor glomerular abnormalities

4)

(微小変化型,MGA—type injury)〕

 光学顕微鏡では糸球体にほとんど異常がみられず,電子顕微鏡的な検索が必要な病型。
蛍光抗体法にて免疫複合体の沈着が示されれば,糸球体腎炎の初期像(IgA腎症,膜性糸
球体腎炎(膜性腎症),ループス腎炎など)の可能性が示唆される。免疫複合体の沈着がな
ければ,臨床像によって,微小変化ネフローゼ症候群,菲薄基底膜病,アルポート症候群
などの疾患が鑑別の対象となる。

* Mayo/RPSコンセンサス

6)

のminimal mesangial GNはここに含まれる。

4

表2

 糸球体病変の組織型と基本の傷害パターン

Conventional histological typeBasic injury pattern

Definition

Minor glomerular abnormalities
微小変化

MGA type

光顕では糸球体にほとんど異常がみられず,電顕に
よる検索が必要な病型である。

Focal segmental glomeruloscle- 
rosis
単状分節性糸球体腎炎

FSGS type

微小変化型を背景に,分節性硬化と上皮細胞過形成
を示す像が1個でもみられるのが基本型である。硬
化を示さないvariantがある。

Membranous GN
膜性糸球体腎炎(膜性腎症)

Membaranous typeびまん性,全節性に係蹄の肥厚を示し,糸球体基底

膜のスパイクや点刻像がみられるのが基本型であ
る。微小変化型との鑑別には蛍光所見が重要であ
る。通常,急性活動性病変には乏しい。

Mesangial proliferative GN
メサンギウム増殖性糸球体腎炎

Mesangial type

メサンギウム増多を主病変とする病型。基底膜の変
化(二重化)は分節性にとどまる。様々な程度で急
性活動性病変を伴う。

Endocapillary proliferative GN
管内増殖性糸球体腎炎

Endocapillary typeびまん性,全節性に管内細胞増多を示す病型であ

る。通常,メサンギウム細胞増多や基底膜の変化(二
重化)には乏しい。

Membranoproliferative GN
膜性増殖性糸球体腎炎

MPGN type

メサンギウム細胞増多と係蹄の傷害とが同時にみら
れる病型である。びまん性,全節性に基底膜の変化

(二重化,スパイク,点刻像)がみられる。様々な程

度で急性活動性病変を伴う。

Crescentic GN
半月体形成性糸球体腎炎

Crescentic type

微小変化を背景に,半月体が1個でもみられる病型
である。

Necrotizing GN
壊死性糸球体腎炎

微小変化を背景に,係蹄壊死が1個でもみられる病
態である。半月体が1個でもあれば半月体型とする。

Sclerosing GN
硬化炎症腎炎

ほとんどの糸球体が硬化に陥っており,病型が判定
できない病態である。

Unclassified GN
分類不能

以上の病型のどれにも分類できない病態である。

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