ときは,他の臨床症候や病型診断からのアプローチを試みる。とくにアミロイドーシスで
は微小糸球体変化のようにみえる場合もあるので,臨床的に疑われる場合はコンゴレッド
染色や電顕での検討を行う。

2)慢性腎炎症候群あるいは無症候性・肉眼的血尿を主体とする疾患

図3

 疾患の時期により組織像はさまざまで,微小糸球体変化のこともあれば,糸球体の細胞
増多や硬化性変化が混在することもある。病変は巣状・分節性のことが多い。蛍光抗体法
によりIgA腎症やIgA血管炎などの免疫複合体糸球体腎炎を,電顕所見も加味して菲薄基
底膜病やアルポート症候群などを鑑別する。これらの疾患に組織像が合致しないときには
他の臨床症候や病型診断からのアプローチ,病因からのアプローチも考慮する。このカテ
ゴリーには軽微な尿異常を呈する症例が多く,病勢が弱い状態や組織学的変化が乏しい状
態も含まれるため,変化を見落とさないことが重要である。

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  巻末資料

慢性腎炎症候群

あるいは無症候性・肉眼的血尿

微小糸球体変化~細胞増多・硬化が混在

蛍光抗体:IgA優勢

蛍光抗体:陰性

電顕:基底膜異常

あり

電顕:特異的

所見なし

・IgA腎症 (各論1)

・IgA血管炎(各論7)

・アルポート症候群 

・菲薄基底膜病 

(各論18)

非糸球体性血尿

蛍光抗体:陽性

IgAは陰性あるいは

優勢でない

・免疫複合体

   糸球体腎炎

 (各論4~6)

図3

 慢性腎炎症候群あるいは無症候性・肉眼的血尿を主体とする疾患

ネフローゼ症候群

微小糸球体変化

図3~6,9,10

(各論14~17)

細胞増多・沈着物

膜性腎症

(各論4)

蛍光抗体:IgG,C3

電顕:上皮下沈着物

基底膜病変(spike)

MCNS

(各論2)

蛍光抗体:陰性

電顕:足突起消失

FSGS

(各論3)

蛍光抗体:IgM,C3分節性

電顕:足突起消失

分節性硬化病変

FSGS:focal segmental glomerulosclerosis,MCD:minimal change disease

ステロイドの反応性や連続切片による分節性病変の検出はFSGSとMCDの鑑別に役立つ

図2

 ネフローゼ症候群を呈する疾患

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