C3腎症

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概念と定義

 小児に多い低補体血症を特徴とする膜性増殖性糸球体腎炎(membranopro- 

liferative glomerulonephritis:MPGN)の中に,補体制御因子の遺伝的異常により第2経
路(alternative pathway)が活性化される病態が明らかとなり

1—3)

,2010年にC3腎症(C3 

glomerulopathy)の概念が提唱された

4)

。C3腎症の定義は,蛍光抗体法で免疫グロブリン

の沈着がなく,補体C3成分が単独に沈着する糸球体腎炎とされる

5)

。形態学的にはMPGN

型をとることが多く,かつて特発性MPGNと診断された症例の多くはC3腎症とみなされ
ている。(各論5を参照)
 C3腎症は病因に基づく疾患概念であり,形態学的な分類に基づくdense deposit disease

(DDD)とC3腎炎(C3 glomerulonephritis:C3GN)を包括的に総称する疾患名と理解さ

れている(

図1

)。DDDは電顕で,糸球体基底膜の緻密層(lamina densa)内の帯状の高

電子密度沈着物(EDD)を特徴とし,MPGNⅡ型に相当する。DDDは加齢黄斑変性症や
partial lipodystrophyの症例に合併することが報告され,脂質代謝異常とも考えられてき
たが,補体活性化異常が共通する病因であることが判明した。一方,C3GNはC3腎症の
うちDDDとは異なる電顕所見をとるものと定義される。すなわち,C3GNは電顕的に
MPGNⅠ型やⅢ型に相当し,沈着物に加え係蹄壁やメサンギウムの炎症反応を特徴とす
る。しかし,実際は同一症例でDDDとC3GNの光顕所見や電顕所見が混在することも多
く,両者のうち優位な変化をもって診断している。

臨床事項

 小児や若年成人に多く,血尿,蛋白尿,ネフローゼ症候群,急性腎炎症候群な

ど種々の症状を呈する。低補体血症が特徴的で,CH50や第2経路のC3が低下する。古典
的経路のC1qやC4は通常低下しない。補体制御因子の異常はH因子の遺伝子異常による
ものが多い。その他にI因子やC3自体の異常も報告されている。自己免疫的な機序とし
て,C3転換酵素に対する自己抗体であるC3 nephritic factor(C3NeF)が検出されること
がある。

病理所見

光顕所見 C3腎症は糸球体腎炎のあらゆる型をとりうるが,最も多いのはMPGN型で

ある。メサンギウム細胞増生と基質の増加により,糸球体は分葉状を呈し,係蹄腔が狭小
化する(

図2

)。しばしば,糸球体係蹄壁にPAS染色やMasson染色陽性の帯状沈着物を

認め,基底膜の二重化(double contour)を呈する(

図3,4

)。軽症例では微小変化型やメ

サンギウム増殖性糸球体腎炎,疾患活動期には管内増殖性糸球体腎炎(

図5

)などの型を

とる。糸球体によって病変の程度に差がみられる。

蛍光所見 C3の単独もしくは優勢の沈着が特徴で,メサンギウムや係蹄壁に顆粒状も

しくは線状に沈着する(

図6

)。C3GNでは顆粒状,DDDでは線状に沈着する傾向がある。

免疫グロブリン(IgG,IgA,IgM)は陰性またはC3に比べて2段階以上低い蛍光強度で
あることが定義となっている

5)

。古典的経路の成分であるC1qやC4は通常陰性である。

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