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1章 血液一般検査
未熟な
後骨髄球
が多く出現することがあります。このように分葉核の平均分葉核数が減るこ
とを核の
左方移動
といい,増えることを核の
右方移動
といいます(
図1
)。
●
図2
に示すように白血球を分類すると,顆粒球として好中球・好酸球・好塩基球・単球など
に加え,リンパ球が末梢血にみられます。白血球は免疫系において大活躍をする細胞群です
(
➡
245頁参照)。各白血球の分画は,血液塗抹標本を用いて染色し,顕微鏡で観察すること
により,各分画比を知ることができます。
●
好中球数は細菌感染症や炎症で増加し,ウイルス感染症では減少する場合が多くみられま
す。抗がん剤の長期投与例では骨髄抑制による副作用のため好中球数が減少します。あまり
に減少すると
易感染
の状態に陥り,生命の危険が危ぶまれることがあります。好中球数が増
減する主な疾患を
表1
に示します。
●
リンパ球数の増加はリンパ性白血病と小児期の生理的変動が代表的です。一方,減少する疾
患ではエイズが代表的です。HIVウイルスはCD4リンパ球に感染し,ウイルスに乗っ取ら
れたリンパ球は死滅します。エイズ治療薬の経過観察において,リンパ球数の推移は治療の
10μm
10μm
左方移動
右方移動
10μm
後骨髄球
桿状核球
好中球,4葉
好酸球
顆粒球の
なかま
白血球
を分類
リンパ球の
なかま
好塩基球
単球
Bリンパ球
Tリンパ球
寄生虫,アレルゲンに対する生体反応で増加する。
クッシング症候群で低下する。
好中球
走化,貪食,殺菌作用がある。
アレルギー反応を引き起こすと考えられている。
液性免疫を担う(免疫グロブリンを産生)
ヘルパーT細胞,Bリンパ球に作用して形質細胞に分
化させ,抗体をつくるなど免疫の中心的役割。
単球は血液内に存在し,組織内に移動するとマクロ
ファージや樹状細胞に変化する。
リンパ球に対して抗原提示を担う(抗原提示細胞)。
好酸球
好中球
桿状核好中球
好塩基球
単球
リンパ球
図1
核の左方移動と右方移動
図2
末梢血にみられる代表的な白血球とそのはたらき(白血球5分画)