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1章 血液一般検査
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平均赤血球ヘモグロビン濃度
(MCHC:mean corpuscular hemoglobin concentration)
個々の赤血球のヘモグロビン濃度を%で表した数値,すなわち赤血球の一定容積に対するヘモグロビン
量の比を%で表したものです。
MCHC(%)=
Hb(g
/
dL)
Ht(%)
貧血の型と赤血球平均恒数
貧血は主にMCV(平均赤血球容積)の結果から分類する方法が一般的です。
貧血の型
MCV
主な貧血
小球性貧血80以下(低下)
鉄欠乏性貧血,サラセミア,鉄芽球性貧血,
慢性炎症による貧血
正球性貧血81〜100(正常)再生不良性貧血,溶血性貧血,悪性腫瘍による貧血,
急性出血後,内分泌疾患
大球性貧血101以上(上昇)悪性貧血(巨赤芽球性貧血),溶血性貧血,
重症肝障害による貧血,一部の再生不良性貧血
主な貧血の種類
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鉄欠乏性貧血
(
図3
):ヘモグロビンの構成成分である鉄が不足し,ヘモグロビンがつくられなくなるた
めに発症します。赤血球1個あたりの大きさを示すMCVが80以下だと,小球性貧血の可能性が高く,
その大部分は鉄が足りない鉄欠乏性貧血です。食生活による鉄摂取量の不足,月経過多や消化管出血な
どによる鉄の損失,胃切除などによる吸収障害が主な要因です。
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再生不良性貧血
:骨髄がはたらかなくなって起こる貧血です。骨髄の幹細胞が免疫系によって抑制され
るのが主な原因です。赤血球のほか,白血球や血小板も減少します。
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悪性貧血
(巨赤芽球貧血):赤血球の成熟過程には,ビタミンB
12
,葉酸および銅が必要です。これらの
成分が欠乏すると,巨赤芽球が成熟赤血球に変化できず,悪性貧血が起こります。悪性貧血の治療には
ビタミンB
12
を補給します。
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溶血性貧血
:寿命を迎えた赤血球は破壊され,新しい赤血球が産生されます。赤血球の産生を上回る速
度で赤血球が破壊されると,溶血性貧血の原因となります。比較的まれな貧血ですが,発症原因は遺伝
性のもの(ヘモグロビン異常,酵素異常),自己免疫機序によるものが知られています。
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サラセミア
:ヘモグロビンを構成する蛋白質の異常によって正常な赤血球がつくられないために貧血と
なります。ヘモグロビンを構成する蛋白質にはα鎖とβ鎖があり,どの鎖が生成できないかでαサラセ
ミアとβサラセミアとに分類されます。地中海地方に多いので地中海性貧血ともよばれます。