各 論

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A.肝疾患

A.肝疾患

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肝良性病変

【臨床像】

細胞診の対象となる良性病変には,a.肝細胞による結節性病変:肝硬変による再生結節

liver cell dysplasia(liver cell change

),限局性結節性過形成,異型結節,肝細胞腺腫など,b.

肝内胆管の腫瘍性病変:胆管上皮内腫瘍(biliary intraepithelial neoplasia;BilIN

),粘液産生

性の嚢胞性病変など,c.非上皮性病変:血管筋脂肪腫(angiomyolipoma;AML),炎症性偽腫
瘍など,d.肝嚢胞および肝膿瘍,などがある。特徴的な症状を欠き,血液生化学的検査や画
像で診断することが困難な病変や,無症状で偶然発見されるものも多い。

WHO分類(2010)

【病理組織像】

細胞診の対象となる代表的な病変について述べる。

肝細胞による結節性病変
①肝硬変再生結節:肝細胞索の乱れや肝細胞の再生増殖像を呈する。しばしば顕微鏡的病巣と
して,核・胞体の大型化したliver cell dysplasiaがみられる。②異型結節:慢性肝炎や肝硬変
にみられ,周囲とは明瞭に区別される結節。通常径2cm以下。軽度異型結節では構造異型は
なく,中等度の細胞密度の増大(周囲肝組織の2倍程度)を示す。高度異型結節はわずかな構造
異型または部分的な細胞密度の高度の増大(2倍以上)を示し,境界病変とされる。③肝細胞腺
腫:正常肝を背景とし,径5〜15cmで,境界は明瞭。正常肝細胞よりやや大型で,胞体は脂
肪やグリコーゲンに富む。正常門脈域を欠く。遺伝子異常により,著明な脂肪化を示す群,細
胞異型や構造異型(腺管形成)を示す群や,血管形成異常を示す群がある。
肝内胆管の腫瘍性病変

肝外胆管と同様の病変がみられる。詳細は肝内胆管癌の項(p.227)に譲る。

非上皮性病変
①血管筋脂肪腫:血管周囲の類上皮細胞より発生する過誤腫。成熟脂肪,血管,平滑筋よりなり,
平滑筋細胞がHMB45染色陽性を示す。半数以上に髄外造血がみられる。②炎症性偽腫瘍:筋
線維芽細胞や線維芽細胞の増生と著明な慢性炎症細胞浸潤を示す。
肝嚢胞および肝膿瘍
①肝嚢胞:先天性では胆管の増生や拡張を示す。後天性には感染性,炎症性,腫瘍性,寄生虫
性などがあり,炎症性では被覆上皮を欠く。②肝膿瘍:細菌や赤痢アメーバなどの感染が原因
となる。中心部の膿瘍腔と周囲の膿瘍壁(肉芽),その周囲に反応性の浮腫性変化を認める。

【細胞像】

肝細胞による結節性病変
①肝硬変再生結節:中等度の核の大小不同とクロマチン増量,核小体の明瞭化を示す。しばし