各 論

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A.真菌感染症

A.真菌感染症

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口腔カンジダ症

(oralcandidiasis)

Candida属は酵母型真菌で,口腔,食道,皮膚,腟に常在する。口腔からはC.albicans,C.

tropicalisが検出され,C.albicansは20〜40%の健常人の口腔に検出される。カンジダ症患者
の過半数は60歳以上で,女性にやや多い。

主に病原性を発揮するのはC.albicansで,口腔カンジダ症患者の96.0%に検出される。通

常は病原性を示さないものの,日和見感染,ステロイドの服用や長期にわたる抗生物質の服用
による菌交代現象が契機となり局所で増殖し,炎症を惹起する。主な全身的要因は免疫力の低
下で,加齢,薬剤の使用(ステロイド剤,免疫抑制剤,抗がん剤)や,後天性免疫不全症候群が
関与する。局所的要因には唾液分泌量とsIgA含有量の低下,放射線照射,義歯の装着が挙げ
られる。

【臨床像】

臨床的には病状の進行に伴い灼熱感や味覚異常が出現する。肉眼的に①偽膜性,②紅斑性,

③増殖性の3つに分類される。①偽膜性カンジダ症はC.albicansの増殖により形成される白
苔と,粘膜の発赤が混在しており,臨床的に白板症との鑑別を要する。②紅斑性カンジダ症は
粘膜の発赤を認めるもので,臨床的に紅斑症との鑑別を要する。③増殖性カンジダ症は被覆粘
膜の隆起を特徴とし,粘膜表面には白苔と発赤を伴う。舌背部に形成されたものは正中菱形舌
炎として知られている。

【病理組織像】

Candida属の形態は仮性菌糸(pseudohypha)と胞子(spore)の両者が混在しており,発育条

件がよいと仮性菌糸の形態をとる。組織学的には,口腔カンジダ症は重層扁平上皮表層部に仮
性菌糸が垂直に侵入する像がみられ,上皮の過角化や棘細胞層の肥厚,上皮内への好中球浸潤,
上皮脚の肥厚・伸長が認められる。

【細胞像】

口腔カンジダ症は腟カンジダ症と比べて,仮性菌糸の接合部が目立たず,また,仮性菌糸お

よび酵母細胞の幅径が大きい傾向にある(

図25

)。PAS染色を行うと仮性菌糸の太さが強調さ

れ,診断に有用である(

図26

)。口腔,特に歯牙の残存する歯肉から得られた検体には,多数

の桿菌を背景にみることがある。

【細胞診の判定区分】

NILM
推定診断:カンジダ症

【鑑別診断・ピットフォール】

桿菌や,その表面に多数の小桿菌や球菌が付着して形成されるcorn-cobをCandida属と判

断しないよう,注意を要す。また重層扁平上皮細胞には,核腫大,核の軽度形態不整,核小体