各 論

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A.非腫瘍性病変

A.非腫瘍性病変

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反応性リンパ濾胞過形成

(reactive follicular hyperplasia)

【臨床像】

最もよく遭遇する反応性リンパ増殖疾患であるが,患者の年齢が重要である。小児や若年者

ではごく普通にみられる病変で,ウイルス感染等の既往を有することが多い。臨床的には痛み
を伴い,急速なリンパ節腫脹を来すが,限局性のリンパ節腫脹を来すことが多い。中高齢者で
は関節リウマチ,Epstein-Barr(EB)ウイルスや後天性免疫不全ウイルス感染症に加え,担癌
患者の表在性リンパ節にもリンパ濾胞過形成がみられることがある。

【病理組織像】

様々の形態や大きさの胚中心を有するリンパ濾胞が,皮質,髄質を問わず認められる(

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)。中拡大で反応性胚中心に特徴的な極性(胚中心細胞〔centrocyte〕の多い明調帯,胚中心芽

球〔centroblast〕と核分裂像の多い暗調帯)を確認できる。反応性胚中心には多数の核分裂像や
核破片貪食組織球が認められる。

【細胞像】

反応性胚中心には以下の所見が認められる(

図21

)。

1)濾胞樹状細胞はリンパ濾胞の胚中心に存在する抗原提示細胞で,細胞は大型,核は類円形で

大きくときに多核で,核小体は通常小型で1個,核の中央に位置する。細胞質は灰青色,あ
るいは淡染性で認めにくいこともある。

2)胚中心芽球の核は類円形であり,クロマチンは細網状,核膜に付着した小型あるいは中型の

核小体が数個認められる。細胞質は狭い。

3)胚中心細胞は主として中型の核形の不整な細胞である。
4)核破片貪食組織球(tingiblebodymacrophage;TBM)の核は類円形あるいは腎形で,クロマ

チンは疎な細網状,核小体は小さい。豊富な細胞質は灰青色,ときに泡沫状である。アポトー
シスに陥った細胞を貪食した組織球である。

5)核分裂像の存在。

【細胞診の判定区分】

良性

【鑑別診断・ピットフォール】

鑑別を要するのは中型の細胞を主とする濾胞性リンパ腫(FL,Grade1/2)である。鑑別点は

反応性リンパ濾胞増生では大型の胚中心芽球が小型の胚中心細胞より多い点,核分裂像や核破
片貪食組織球がFLはみられても少数であることである。