20
◉
上気道
総 論
各 論
A.非腫瘍性疾患
■
真菌性副鼻腔炎(
fungal sinusitis
)
40〜50歳代に多く,女性にやや多い。罹患部位は2/3以上が上顎洞である。一般の慢性副鼻
腔炎は通常両側性であるが,真菌症では大部分が片側性で,骨破壊像を認めることもあること
から,悪性腫瘍が疑われる場合がある。
a.アスペルギルス症(
aspergillosis
)
大部分は限局型で,fungus ballを形成する。免疫不全者では広範な壊死を伴い,頭蓋内や
副咽頭間隙等に進展し致死的となり得る。アレルギー反応により,多数の好酸球,Charcot-
Leyden結晶ならびに菌糸を含む濃縮粘液を貯留する場合もある。菌糸は3〜6μm幅で,隔壁
を有し,45
°
の角度でY字状に分岐する(
図3
)。分生子(胞子)は円形で,連鎖状あるいは不規
則に集簇する。
【細胞診の判定区分】
陰性あるいは良性
b.ムーコル症(
mucormycosis
)
糖尿病等の免疫不全者の副鼻腔を侵し,重症の場合は頭蓋内へ進展し死に至る。血管親和性
が高く,真菌塞栓を形成して肺等の諸臓器に出血,梗塞をもたらす。菌の幅が広く(6〜15μm),
分岐角度が大きく,隔壁形成がない(
図4
)。
【細胞診の判定区分】
陰性あるいは良性
B.腫瘍性疾患
1
上皮性腫瘍
a.鼻副鼻腔乳頭腫(
Schneiderian papilloma
)
【臨床像】
鼻腔・副鼻腔の呼吸上皮(Schneiderian epithelium)に由来するとされ,ヒト乳頭腫ウイルス
(特に6型,11型)が発生に関与している。増殖形式によって外向性乳頭腫,内向性乳頭腫に分
けられる。しばしば再発を繰り返し,内向性乳頭腫は稀に,長期にわたって再発を繰り返した
後に扁平上皮癌への悪性転化を来す。
【病理組織像】
上皮は重層化した呼吸上皮ないし化生性重層扁平上皮からなり,しばしば粘液細胞の混在や
好中球を入れた小腔を有する(
図5,図6
)。
各論