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B.乳腺症

のない中小の腺管の密な増生からなる(

図79

)。一方,硬化性腺症は異型のない小型の腺管の

密な増生および周囲線維結合織の増生を伴っている(

図80

)。しばしば硬癌との鑑別が必要と

なるが,乳管上皮細胞は筋上皮細胞との二相性を示す。また,エオジン好性の基底膜に覆われ
ていることに気づくことが重要である。

【細胞像】

乳管上皮細胞とシート状配列を示す細胞を認める。細胞集塊周辺には筋上皮細胞の介在がみ

られる。閉塞性腺症では,背景に貯留分泌物由来のライトグリーン好性無構造成分を認めるこ
とが多い(

図81

)。硬化性腺症は,細胞集塊の配列は不規則であり,双極裸核状の間質細胞と

ともに核濃縮状,紡錘形を示す乳管上皮細胞がみられる(

図82

)。

 

乳管過形成

(〔

usual

 ductal hyperplasia

/乳管乳頭腫症

duct papillomatosis

【病理組織像】

乳管内における篩状構造の腺腔の形状は様々で極性に乏しい。また,細胞増殖部の細胞は重

積し,不均一であり,細胞も不規則な配列を示す(

図83

)。

【細胞像】

重積した集塊状の出現を示す。集塊を構成する細胞は異型に乏しく不揃いで,方向性は不均

一である(

図84

)。ときに細胞密度が高くなり,篩状構造や微小乳頭状構造を認めるが,癌に

比較すると均一性に乏しく篩状構造も不完全である。

 

アポクリン化生

apocrine metaplasia

,アポクリン囊胞

apocrine cyst

【病理組織像】

乳腺症の上皮細胞はしばしばアポクリン化生を示し,細胞質にはアポクリン顆粒を認める。

嚢胞状形態を示す場合,アポクリン嚢胞と呼ばれる(

図85

)。

【細胞像】

通常の乳管上皮細胞に加えて,シート状配列を示す異型に乏しいアポクリン化生上皮を認め

る(

図86

)。

 

囊胞

cyst

,濃縮囊胞

concentration cyst

,乳管拡張症

duct ectasia

【病理組織像】

しばしば乳腺症では乳管の通過障害によると考えられる大小の嚢胞を形成する。乳管が拡張

し,分泌物が貯留することがあるが,拡張した乳管内外に組織球が集簇した場合は黄色肉芽腫
ともいわれる。

【細胞像】

分泌物や泡沫細胞を背景に,乳管上皮細胞やアポクリン化生を認めると嚢胞形成や拡張乳管

が示唆される(

図87

)。ときに嚢胞内容は停滞,濃縮し,濃縮嚢胞となる(

図88

)。その場合,

細菌や分泌が結晶化した石灰化などが認められる。嚢胞をターゲットとして穿刺吸引がなされ
た場合,上皮成分が標本にみられず,上記のような所見のみの場合でも検体不適正とせず,検