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B.月経周期と内膜変化
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月経周期と内膜変化
子宮内膜は月経により剥脱する機能層と,剥脱せずに次周期に増殖を開始する筋層近くの基
底層に大別される。子宮内膜の形態は排卵を境に大きな変化を生じる。
a.増殖期
月経後,卵胞より分泌されるEの影響により内膜は増殖を開始する。増殖初期〜中期では内
膜腺は直線的で腺細胞は背の低い円柱状を示し,内膜間質は密な紡錘形を呈する。増殖後期に
なるとE活性の急上昇に伴い,内膜腺は盛んに増殖し迂曲・偽重層を呈し,核分裂も出現する。
b.分泌期
排卵後,黄体より産生されるE・Pの作用でグリコーゲンに富む粘液様物質を分泌する。分
泌期初期(排卵直後から数日間)は,内膜腺に核下空胞が観察される。分泌期中期になると,内
膜腺は拡大迂曲も著しく,腺細胞は立方状で旺盛なアポクリン分泌を開始する。内膜間質は浮
腫状変化を来し疎な形態を示す。分泌後期になると,内膜腺はますます拡大し鋸歯状迂曲が著
明になり,間質細胞は脱落膜様変化を示す。月経直前には,E・Pの減少に伴い内膜腺・内膜
間質ともに萎縮,融解と退行性変化を示し,鬱血虚血により機能層より剥脱し月経期へと向か
う。
内膜細胞診を理解するためには,ホルモン環境に支配された内膜形態の生理的変化を理解す
ることが肝要である。
図1
月経周期とホルモン
(Schulbuch-O-Mat webサイトより一部改変)