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外陰

子宮頸部

総論

総 論

A.頸部細胞診の基本

1

採取法と採取器具

子宮頸部の細胞採取は,主たる病変の好発部位である扁平上皮-円柱上皮境界(squamoco-

lumnar junction;SCJ)から採取することが重要で,特に化生細胞や頸管腺細胞の出現が適正
標本の指標となる。細胞採取は双合診,コルポスコピー等の腟内操作の前に行うことが望まし
く頸管粘液や血液,分泌物が多い場合は採取細胞量が不十分で不適正標本になることがあるた
め,綿球等で十分除去することが重要である。採取器具には,ヘラ(プラスチック製,木製,
サイトピックα),ブラシ(サイトブラシ,HPVサンプラー,サーベックスブラシ,Jフィット
ブラシ),綿棒等がある(

図1

)。

a.ヘラ(プラスチック製,木製,サイトピックα

頸管内に挿入できるタイプが適しており,採取細胞量は多いが出血する場合がある。

b.ブラシ(サイトブラシ,HPVサンプラー,サーベックスブラシ,Jフィットブラシ)

閉経後等のSCJが頸管内に入り込んでいる場合や頸管狭小例でも,細胞が多量に採取される

が,強く擦過すると出血することがある。液状化検体細胞診(liquid based cytology ; LBC)法
の場合は,ブラシの部分が軸から外れる製品が適する。

c.綿棒

出血は少ないが細胞採取率が低く不適正標本率が高いため,妊娠女性や妊娠の可能性のある

女性に対して使用する以外は不適当である。

2

標本作製法

a.直接塗抹法(従来法)

SCJを中心に細胞採取後直ちにスライドガラスに塗布し,95%エタノールやスプレー式,滴

下式固定剤で速やか(遅くとも5秒以内)に固定する。直接塗抹法は,乾燥しやすいので素早く
固定しなければならない。採取した細胞の塗抹は厚さやムラが生じないように薄く広く塗り,
細胞分布が均一になるよう心がける。固定時間は30分以上であるが,長時間の保存には適さ
ないので可能な限り早め(遅くとも1週間以内)に染色する(

図2,3

)。

b.液状化検体細胞診(LBC)法(BD SurePath,ThinPrep,TACAS)

国内において使用可能であり,検査精度が確立されている代表的な方法は,大別して重力沈

降静電接着法と吸引吸着転写法がある。いずれも,細胞採取後直ちに採取器具を固定保存液の
入ったバイアルに入れるため,細胞乾燥はなく,採取された全ての細胞が回収され検査に反映
される。標本作製処理工程において,血液,炎症細胞や粘液等を分離あるいは除去し均一化さ
れた一定量の検体をサンプリングするため,背景所見は減弱する。使用器具,薬剤,使用方法
は,各社の仕様書を遵守することで薄層塗抹標本となるが,国内で正式に準拠しているベセス
ダシステム2001に基づく適正標本の条件に適応する標本作製法として有用である(

図2,4

)。