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Ⅳ
Ⅴ
唾液腺の形態
口腔に開口する唾液腺には,小唾液腺と大唾液腺がある。1日に分泌される唾
液は約1〜1.5Lであるが,60〜70%が顎下腺,25〜35%が耳下腺,5%あるいは
それ以下が舌下腺,5〜8%が小唾液腺から分泌される
1)
。
小唾液腺(minor salivary gland)は口腔粘膜下の分泌終末構造から短い導管が出
て口腔に開く口腔腺であり,分泌液は粘液を多く含む。解剖学的には,舌の前後
の表面に開口する前舌腺と後舌腺,舌乳頭周囲の溝に開口するエブネル腺,唇に
開口する口唇腺(labial gland),口腔前庭に開口する頬腺,臼後腺,口蓋腺がある。
大唾液腺(major salivary gland)は,耳下腺,顎下腺,舌下腺の3種類あり,自
律神経の二重支配を受けている(
図1
)。耳下腺の副交感神経一次中枢は延髄に
ある下唾液核であり,舌下腺・顎下腺の副交感神経一次中枢は橋と延髄の間にあ
る上唾液核である。また交感神経の一次中枢は胸髄側核にあり,動脈周囲の神経
叢として腺体内に入る(唾液腺の神経支配)。
唾液腺は分泌終末部(secretory endpiece)と導管(duct)からなる(
図2
)。分泌
終末部においては,原唾液(primary saliva)が産生・分泌される。導管を通過す
る間に,導管細胞の分泌により,K
+
イオンを得たり,導管細胞の吸収により
Na
+
イオンを失ったりして,原唾液の組成は修飾を受ける。その結果,口腔に分
泌される最終唾液(final saliva)は,原唾液と異なる組成をもつ。唾液の分泌速度
(唾液の流速)により導管での唾液の滞留時間が異なり,最終唾液の組成は影響
を受ける
2)
(このThaysenの二段階説をYoungらが実験的に証明した
3)
)。
細胞同士は3種の様式〔タイト結合(tight junction),デスモゾーム(desmo-
some),ギャップ結合(gap junction)〕で結合され,管状(舌下腺)あるいは腺房
状(耳下腺),混ざりあった混合腺(顎下腺)の分泌終末部を形成する。管腔と基
底側細胞間隙の区別は,輸送の一方向性を明確にするために不可欠である。形態
学的に,分泌終末部の管腔には微絨毛(microvilli)が存在し,基底側膜には基底
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唾液腺の基礎
第
Ⅲ
章