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にも転移はなさそうだから、抗癌剤による追加治療も当面行わないで様子を見ると主治医に言われた由。退院後奥さんは数ヵ月に一度外来に通院、岡さんは律儀にその都度手紙を送って来られた。一年も経たない頃、岡さんと会う機会があった。前章で書いた、元日本テレビのディレクター高田和男氏が主宰する講演会に赴いた時のことだ。御上京の機会があれば是非一度お会いしたいと言われていたので、講演会の式次第を送ったところ、当日、会場に足を運んでくれたのだ。岡さんが来ていることは、講演を終えた段階で初めて知った。講演前には司会者との打ち合わせなどで参会してくれた人たちと言葉を交わす時間はなかったからである。加藤久雄君や在京の友人数名が来てくれていることは一段高い講演席から見て取れたが、一度も会ったことがないから岡さんが来てくれているかどうかは分からなかった。31第二章 最愛の妻を救った選択肢

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