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夫たる岡さんが私に相談して来られたのは、近藤説に異を唱える私の著作『そのガン、放置しますか?ま手に取り、この著者なら何とか妻を翻意させる助言を与えてくれるのではないだろうか、と期待されたからだ。進行癌は根治できない、早晩再発する、などということはない、手術や抗癌剤で完治した人は、私の乏しい経験でも何人かおり、その好例をピックアップして先の本に書いた。近藤説を信奉して胃癌を放置、自然の経過に任せた医者のことを近藤さんは書いている。二年半も延命し、ほとんど苦しみはなかった、と。私に言わせれば、まだ中年で、癌もさ程大きくはない、手術をすれば、たったの二年半どころか、永久治癒を得て天寿を全うできただろうに、あたら近藤教にかぶれてしまったばかりに命を縮めてしまったとしか思われない。奥さんに言ってやって下さい、と私は岡さんに言った。放っておけばこの医者のように精々二、三年の命ですよ、いや、大腸は胃袋と違って細い管腔臓器だか近藤教に惑わされて、君、死に急ぐなかれ』をたまた29第二章 最愛の妻を救った選択肢

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