2か?」という問いに対する答えを自分なりに考え,到達可能なゴールを設定しなければならない。 臨床上のスキルアップや,それを基にした個々の患者への診療という人助けのプロセスは,臨床家にとっての自己実現の形である。論文を書くことは,それとは次元の異なる人助けのプロセスであり,もうひとつの自己実現であるといえよう。 研究者は皆,究極的には,当該研究領域の発展に寄与することを目指して,研究し論文を執筆する。自分が書いた論文は,既存の医学知識をアップデートし,多くの臨床家に読まれ,彼らによって実践に移されることにより,多くの人命を救うことにつながるかもしれない。 もちろん,たった1本の論文が世の中を変えるわけではない。医学の進歩は,古今東西の医学研究者たちが執筆した数多くの論文がもたらす成果の総和である。自分の論文もその中の一つである。ほんのわずかでもいい。医学の進歩のために,全力を尽くして,論文を書き上げよう。 また,臨床家にとって,論文を書くことにはもうひとつ大きな意義がある。それは,自らの日常臨床を問い直し,より良い医療を実践するための大きな飛躍の一歩となりうることである。 臨床研究の出発点はいつも,日常臨床における経験である。臨床家が取り組むべき臨床研究のテーマは,日常臨床の現場に転がっている。現場で感じた素朴な疑問が,そのままクリニカル・クエスチョンになりうる。つまり,臨床研究は日常臨床の延長なのである。UpTo-Dateを眺めても,PubMedで文献検索しても,自分のクリニカル・クエスチョンに応えられるエビデンスは見つからないかもしれない。新たなエビデンスを構築できるのは,自分だけかもしれない。
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