眼科

眼形成アップデート

2010年10月号(52巻 11号)

企 画
定 価 2,916円
(本体2,700円+税)
在庫状況 なし
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特集 眼形成アップデート
序論
岸 章治
1.眼瞼下垂
根本 裕次
2.眼瞼内反・外反
江口 秀一郎
3.重瞼術
市田 正成
4.眼瞼の再建
矢部 比呂夫
5.眼窩壁骨折
鹿嶋 友敬
■表紙の解説
現在の河津図書館
岡島 修
■綜説
眼科領域のValue-Based Medicineと効用分析
山田 昌和
リポフスチンと黄斑色素(ルテイン、ゼアキサンチン)
尾花 明
■網膜硝子体手術メンタル編
121.失明が先か、命が先か
出田 秀尚
■より良い診療を目指して 他診療科との連携
10.不整脈(病態と治療法・眼科医が注意すること)
中井 俊子
■原著
眼科医を中心とした院内におけるロービジョン外来
稲泉 令巳子
■臨床報告
視野異常にて発見された産褥期の脳出血の1症例
村上 純子
4種類の角膜厚測定機器の比較
説田 雅典
角膜混濁を伴う増殖硝子体性網膜症に対して眼内内視鏡手術を行った1例
樋口 かおり
眼瞼異物肉芽腫の1例
立花 敦子
 本号の「表紙の解説」に記載された故石原 忍先生にまつわる逸話の中で「青年期に先生のような高邁高潔な先達に側近く接する機会をいただいたことは人生最大の宝物であった」と関係者の一人が語る心象風景に、感銘を受けました。以前、休暇を利用して愛媛を旅行した際に、松山城のついでに「坂の上の雲ミュージアム」にも行きました。その時、非常に印象深かったのが、日本における騎兵隊の創設者であり陸軍大将(従二位に叙位)まで上り詰めた秋山好古が、故郷に戻って北予中学校(現在の松山北高校)の校長に就任したことでした。当時の感覚では、元陸軍大将という高官が受け入れるには異例な降格人事なのですが、本人の強い希望であったということです。「最後の古武士」と評された高潔な人格は、校長としては、権威を振りかざすことのない温和で、安易な精神主義に堕して叱りつけたりすることのない対応であったといわれています。人生の最後に、教育者としての薫陶を大事にした彼の選択は深く考えさせられます。
 
 私自身、研修医の頃に、尊敬できる恩師に遭遇したことが、その後の人生の選択を決定したという思いが深いので、教育の本質は、「尊敬できる恩師に巡り会うことで、その後の人生を一変させるほどのインパクトを受ける」ことなのかなと思っています。でも、残念ながら、大学教員としての自分自身を振り返ってみると恥じ入るばかりです。大学や学会など、今日のアカデミアを見回しても、襟を正すほどの「高邁高潔」と評されるまでの教育者は少なく、寂し
いように思います。また、しばしばアカデミアの管理運営には、人格面ではどうかなあと懸念する方が、政治力や肩書きに物を言わせて権勢をふるったりしていて、組織での必要悪で仕方ないとは思うものの、正直なところ、なんとなく暗澹とした気持ちになることが時々あります。教育者としての高邁高潔な人格、あるいは研究者としての純粋な科学における実績が優れた者を、リーダーとして選択し、後進を指導するのが、教育や研究を推進すべきアカデミアのあり方であると思いますし、国や組織が勃興して勢いのある際は、現実と理想が合致していくのだろうと思います。その観点からは、昨今の日本の社会情勢の閉塞が、教育者や医療者の世界にも反映されているのかもしれません。そんなことを考えていると、隠遁思想やスローライフ志向の強い私は、そろそろ大学を早期退職して田舎暮らしへと思い至ってしまうのですが、まだ、もう少し頑張ってからでないと楽しいセカンドライフはないものと自省する次第です。

 さて、それはさておき、今回の特集は、眼形成アップデートです。外眼部疾患は、華やかな進歩こそないものの、日常診療の中で重要なテーマです。ドラマチックな展開のあるホットなトピックだけではなく、このようなテーマを定期的に取り上げるのも、『眼科』の良い特性だと思っています。「Value−Based Medicine」や「黄斑色素」も知っておきたい大事な問題です。本号の『眼科』も、読者の皆様に喜んでもらえるものと期待しております。

(谷原秀信・記)