眼科

水晶体・眼内レンズの亜脱臼と核落下

2009年10月号(51巻 11号)

企 画
定 価 2,916円
(本体2,700円+税)
在庫状況 なし
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特集:水晶体・眼内レンズの亜脱臼と核落下
序論
谷原 秀信
1.リスク要因と眼圧上昇
大久保 真司
2.水晶体・眼内レンズ亜脱臼の診断のコツと落とし穴
林 研
3.Capsular tension ringの応用
徳田 芳浩
4.パーフルオロカーボンと硝子体手術の応用
井上 真
5.眼内レンズ縫着テクニックの現状( 落ちたものも含めて)
塙本 宰
6.核落下への対応
佐藤 幸裕
■表紙の解説
原田病(Vogt -小柳-原田病)10
山本 素士
■展望
コンタクトレンズの展望−2006年度−
土至田 宏
■綜説
角膜での血管・リンパ管新生の研究の動向:VEGF依存/非依存メカニズム
宮本 武
■網膜硝子体手術メンタル編
115.「フィガロの結婚」が伝えるもの
出田 秀尚
■神経眼科疾患
7.Fisher症候群(Miller Fisher 症候群)
三村 治
■臨床報告
イソプロピル・ウノプロストンにより自覚症状の改善がみられた網膜色素変性の1例
中村 誠
眼虚血症候群の血管新生緑内障にベバシズマブ硝子体内投与後レクトミートリプル手術を施行した1例
加藤 睦子
治療経過中に強度の乳頭浮腫および乳頭部出血にて再発したVogt-小柳-原田病の症例
早川 宏一
高度な乳頭周囲網膜下出血を呈した眼循環障害の1例
田上 雄一
◇お盆が過ぎると時間の流れが速くなる。今週は博多臨眼である。前日には評議員会があるのだが、航空便が台風に直撃されそうで、今から委任状を集めている。先週、Retina Congress 2009という学会でニューヨークに行ってきた。補体(complementfactor)の遺伝子多型がAMDに関係することが発見されたのはごく最近のことである。驚いたことに、今回の学会では、補体の活性を抑制する蛋白の硝子体内注入の治験が報告されていた。旅行の楽しみのひとつは本を読めることである。福岡伸一氏(分子生物学者・エッセイスト)によると、宇宙は「エントロピー増大の法則」の支配下にある。秩序あるものは無秩序になり、輝けるものはいつか錆び、水はやがて乾き、熱は徐々に冷やされていく。生物はそれに先回りし、自らを壊し、再構築するという「動的平衡」により存続している。しかし、長い間には分子レベルの損傷が蓄積し、エントロピーの増大に追い抜かれてしまう。これが個体の死であるという。まさに「盛者必衰、逝くもの、昼夜をおかず」である。ただし、個体が死を迎えるときは、次の世代にバトンタッチが行われており、全体としては生命活動が続く。すべての生物が必ず死ぬというのは、利他的なシステムであるという。これによって致命的な秩序の崩壊が起こる前に秩序は別の個体に移行し、リセットされるからである。我々は老若男女、エントロピーの増大からは逃れられない。なんと安堵をもたらす託宣ではないか。悪あがきするのはよそう。

◇今月の特集は「水晶体・眼内レンズの亜脱臼と核落下」である。硝子体手術の設備のない施設での術中、核落下は悪夢であろう。核落下のリスクのある例をどうやって見極めるか。それに遭遇したときはどうするかが詳しく解説されている。硝子体手術ができない状態なら、硝子体内の水晶体片を回収しようと思わずに創を閉じ、硝子体術者に紹介するのがよいだろう。展望はいつもながら力作である。コンタクトレンズの眼光学、生理、合併症が解説されている。特に感染症については一読されたい。綜説は角膜での血管・リンパ管新生の研究の動向である。これは角膜の透明性の維持や角膜移植の拒絶反応などに臨床的意義がある。私にとってFisher症候群は名前を知っていても、何であるか答えられない疾患であった。今回の神経眼科疾患シリーズを読んでやっと納得できた次第である。

(岸 章治・記)