がん薬物療法における曝露対策合同ガイドライン 2015年版

抗がん薬を扱うすべての職種に、本邦初の曝露対策ガイドライン!

編 集 日本がん看護学会 / 日本臨床腫瘍学会 / 日本臨床腫瘍薬学会
定 価 2,160円
(2,000円+税)
発行日 2015/07/15
ISBN 978-4-307-70198-3

B5判・112頁

在庫状況 あり

抗がん薬には高い細胞毒性があり、安全に使用するためには患者の副作用管理のみならず、医療従事者の曝露対策も重要である。本ガイドラインでは、職業性曝露の基本的知識と、抗がん薬の調製・投与・廃棄などの場面で必要な曝露対策について、8つのCQとともに解説されている。日本がん看護学会、日本臨床腫瘍学会、日本臨床腫瘍薬学会の合同で作成された、本邦初の曝露対策ガイドラインである。
目次

第1章 ガイドラインの概要
I 開発の背景
II 重要な用語の定義
III 目的
IV 対象集団
V 利用者
VI 使用上の注意事項および特徴
VII 作成の方法、過程
 1 概要
 2 背景知識
 3 クリニカルクエスチョン(CQ)
 4 系統的文献検索とスクリーニング
 5 エビデンスレベルと推奨の強さ
 6 妥当性の検証
VIII 今後の改訂
IX 利益相反

第2章 背景知識と推奨・解説
I がん薬物療法におけるHazardous Drugs(HD)の定義
 1 危険性の高い医薬品に関する用語
 2 海外のガイドラインにおけるHDの定義
II HDの職業性曝露による健康への影響
 1 HD曝露による有害事象と影響を与える要因
 2 生物学的影響
 3 健康への有害な影響
 4 曝露予防の影響
  CQ1 HDの職業性曝露による妊孕性への影響に対して配慮することが推奨されるか
III 曝露の経路と機会
 1 HD曝露の経路
 2 曝露の機会
IV 曝露予防対策
 1 ヒエラルキーコントロール
 2 推奨される環境・物品等
  1)生物学的安全キャビネット/アイソレーター
   CQ2 HD調製時に安全キャビネットの使用が推奨されるか
  2)閉鎖式薬物移送システム(CSTD)
   CQ3 HD調製時に閉鎖式薬物移送システム(CSTD)の使用が推奨されるか
  3)個人防護具(PPE)
   CQ4 HD調製時に個人防護具(PPE)の着用が推奨されるか
   CQ5 HD調製時のマスクはN95またはN99が推奨されるか
 3 各場面における曝露対策
  1)調製時(注射・内服)の曝露対策
   CQ6 HDの外装に触れる際は個人防護具(PPE)の着用が推奨されるか
  2)運搬・保管時の曝露対策
  3)投与管理時の曝露対策
   CQ7 HDの投与管理の際は個人防護具(PPE)の着用が推奨されるか
  4)廃棄時の曝露対策
  5)投与中・投与後の患者の排泄物・体液/リネン類の取り扱い時の曝露対策
  6)HDがこぼれた時(スピル時)の曝露対策
   CQ8 HDの不活性化に次亜塩素酸ナトリウムが推奨されるか
V 職員がHDに汚染した時
VI 在宅におけるHD投与患者のケア
 1 在宅におけるHD投与患者のケアのための知識
VII メディカルサーベイランス
VIII 職員の管理・教育・研修
資料 1 文献検索式
資料 2 医療現場におけるHazardous Drugsリスト(NIOSH、2014)
資料 3 経口HDの排泄率
資料 4 FDA胎児危険度分類
資料 5 IARC発がん性リスク分類
索引

クリニカルクエスチョン(CQ)一覧
CQ1 HDの職業性曝露による妊孕性への影響に対して配慮することが推奨されるか
CQ2 HD調製時に安全キャビネットの使用が推奨されるか
CQ3 HD調製時に閉鎖式薬物移送システム(CSTD)の使用が推奨されるか
CQ4 HD調製時に個人防護具(PPE)の着用が推奨されるか
CQ5 HD調製時のマスクはN95またはN99が推奨されるか
CQ6 HDの外装に触れる際は個人防護具(PPE)の着用が推奨されるか
CQ7 HDの投与管理の際は個人防護具(PPE)の着用が推奨されるか
CQ8 HDの不活性化に次亜塩素酸ナトリウムが推奨されるか

ガイドライン刊行によせて

一般社団法人日本がん看護学会
理事長 小松 浩子

この度、日本臨床腫瘍学会(JSMO)、日本臨床腫瘍薬学会(JASPO)、日本がん看護学会(JSCN)の3学会により、「がん薬物療法における曝露対策合同ガイドライン」を発刊できますことに心より感謝申し上げます。
がん薬物療法に関する職業性曝露対策の重要性は広く認識されてきました。欧米では1980年代頃より、医療従事者の抗がん薬曝露防止のためのガイドラインが開発され、標準的な曝露対策が波及しています。しかし、日本においては、明確な基準がないまま各施設で欧米のガイドライン等を参考に曝露対策を実施している実情があります。
一般社団法人日本がん看護学会では、ガイドライン委員会を中心に、がん薬物療法における曝露対策ガイドラインの策定を検討してきました。がん薬物療法における曝露は、調製時のみではなく、投与管理、患者の排泄物や環境汚染等も含めた総合的な対策が重要となります。そのため、ガイドライン策定にあたっては、看護師のみならず、医師・薬剤師等の医療従事者が組織的に、施設、地域を視野に入れた対策を講じることが必要となると考えます。
今回、日本臨床腫瘍学会、日本臨床腫瘍薬学会との協働により、「がん薬物療法における曝露対策合同ガイドライン」を策定できたことは、がん薬物療法がより安全に実施できる環境作りにつながるものと考えます。
がん医療における安全性に対する社会の要請は極めて高いものです。このような要請のもと、医師、看護師、薬剤師などを中心とした多職種チームから成る「抗がん剤曝露対策協議会」が設立されています(2014年4月30日)。さらには、厚生労働省労働基準局安全衛生部・化学物質対策課長名で、関係団体に対し通達が出され、抗がん剤ばく露対策のための安全キャビネットの設置、閉鎖式接続器具の使用、ガウン・テクニックの徹底等が示されました(2014年5月29日付)。組織的な曝露対策の進展が今まさに必要とされています。
本ガイドラインががん薬物療法に携わるわが国の医療従事者に広く使用され、エビデンスに基づく曝露対策を進展させ、それにより、がん患者が安全を保証された環境で安心して治療を受けることに役立つことを願っています。
本ガイドラインは今後も3学会の協働のもと、新たなエビデンスを集積するとともに医療従事者はもとより、患者や家族の皆様のご意見を反映しつつ改版を重ねて参ります。どうぞ忌憚のないご意見を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。
2015年6月


ガイドライン刊行によせて

公益社団法人日本臨床腫瘍学会
理事長 大江裕一郎

近年の抗がん薬開発の進歩はめざましく、毎年多くの抗がん薬が市販されています。人口の高齢化にともないがん患者さんも急増しており、抗がん薬の使用量も急増しています。抗がん薬を安全に使用するには患者さんに対して副作用を適正に管理することはいうまでもありませんが、医師、薬剤師、看護師などへの抗がん薬曝露を避けることも非常に重要です。
しかし、日本では最近まで抗がん薬曝露対策はあまり系統立てて行われていませんでした。私が研修医をしていた約30年前には、抗がん薬も他の薬剤と同じように病棟で研修医が調製していました。当時から抗がん薬によりヒトのリンパ球に姉妹染色分体交換(sisterchromatidexchange:SCE)などの変化が引き起こされることが報告されており、がん患者さんのみならず医療従事者に対する発がんの問題が懸念はされていましたが、それに対する対策は十分とは言い難い状況にありました。現在では多くの病院で安全キャビネットの使用、防護服の着用などのもとに薬剤師による抗がん薬調製が行われていますが、投薬の現場や近年増加している経口抗がん薬などに対する対策は十分とは言えません。さらに患者さんの家族や環境に対する曝露対策も重要な課題と考えられます。
このような状況のなか日本がん看護学会の小松浩子理事長より、日本臨床腫瘍学会に対して「がん薬物療法における曝露対策合同ガイドライン」を合同で作成するお話をいただきました。非常に重要な取り組みであり話を進めさせていただく旨、ご返事しましたが、看護師、医師のみではなく薬剤師の協力も必須であると感じました。日本臨床腫瘍学会にも薬剤師の会員は少なくありませんが、やはりがん薬物療法を専門にする薬剤師の学会にも協力していただく必要があると考え、日本臨床腫瘍薬学会の遠藤一司理事長にも協力の依頼をさせていただきました。幸いにも遠藤理事長よりご快諾をいただき、3学会合同でのガイドラインの作成がスタートしました。
この領域は高いエビデンスが多く存在する領域ではなく、3学会から参加されたガイドライン作成委員の先生方もご苦労が多かったものと察しますが、この度、無事に刊行することができました。まずはガイドラン作成委員の先生方に、心より御礼を申し上げたいと思います。本ガイドラインが適正に使用され、医師、薬剤師、看護師などへの抗がん薬曝露が適切にコントロールされることを期待しております。
2015年6月


ガイドライン刊行によせて

一般社団法人日本臨床腫瘍薬学会
理事長 遠藤 一司

このたび、日本臨床腫瘍学会および日本がん看護学会とともに、抗がん薬を安全に取り扱うためのガイドラインがとりまとめられたことには、歴史的に高い意義があります。
抗がん薬には、高い細胞毒性が避けられず、健康人に作用すれば、造血器障害や消化管障害などの急性毒性だけでなく、相当な期間を経てからの悪性新生物の罹患、次世代への生殖遺伝毒性などのリスクを有することは古くから知られており、医療従事者には常識となっているともいえます。しかしながら、専門家であるがゆえに、抗がん薬に対して医療従事者等を防護するという体系的取組は、欧米の医療従事者における取組みや他産業従事者の場合に比較して大きく遅れ、昨年5月にようやく労働安全衛生当局から通達が発せられたばかりの段階にあります。
薬剤師関連団体のこの問題への取組みは、主として、診療報酬における諸基準という形で取り組まれてきました。現在、多くの医療機関や一部の保険薬局に、抗がん薬調剤のための安全キャビネットが整備されるに至っているのは、診療報酬の施設基準によるところが大きかったといえます。近年では、診療報酬における閉鎖式接続器具の加算について、当学会の関係者もエビデンスの創出などに積極的に取り組み、2010年の診療報酬改定でこれが実現したことは、我が国の抗がん薬曝露対策を大きく進歩させました(西垣ら、抗がん薬による被曝防止を目的とした閉鎖式混合調製器具の有用性の検討.日本病院薬剤師会雑誌.2010;46(1):113-7.)。我が国で、抗がん薬曝露に対する対策をより高めるために、本ガイドラインの果たすべき役割はきわめて大きいと考えます。
がん医療も抗がん薬もきわめて早い速度で進歩しており、本ガイドラインも、不断の見直しが必要になることは免れません。しかしながら、現時点において得られる最善の情報がとりまとめられており、これによって我が国のがん医療の安全性が、より高い水準になることが期待できると考えられ、ぜひ、広く活用されることを期待します。
2015年6月