実践的医療ソーシャルワーク論 第2版

実践を視野に入れた「医療ソーシャルワーク論」!

監 修 NPO法人日本医療ソーシャルワーク研究会
編 集 村上 須賀子
大垣 京子
定 価 3,240円
(3,000円+税)
発行日 2009/07/30
ISBN 978-4-307-70195-2

B5判・242頁

在庫状況 あり

偶然にもアメリカでソーシャルワーク教育に携わっておられたスン・レイ・ブー先生(兵庫大学)の指導を得て、遅ればせながら生態学的視点に触れ、人間生活の擁護に立ち向かうソーシャルワーカーには、「人と環境」の両者に同時的に働きかけて行く責務があると確認した。この確認以前は筆者の実践体験は、本来のソーシャルワーカー業務があり、他方、一個人のソーシャルワーカー的活動があり、これらが混在していると感じていた。勤務内の個別援助こそが医療ソーシャルワーカー(以下、MSW)の本来業務であるという理解である。その相談過程でキャッチした「所属機関のサービス改善への働きかけ」や「医療保障の改悪に対する問題提起」などは、労働組合の執行委員としての活動であり、同じく、相談過程で関わった被爆者たちの核廃絶を目した証言活動への支援や被爆者援護の要求に関してはヒロシマのMSWを中心に「原爆被害者相談員の会」の名のもとに展開したボランティア活動であったという認識である。
目の前の患者や家族から突きつけられた問題に、やむにやまれず揺り動かされて重ねた実践はそれまでに学んだ「ソーシャルワーク論」の枠では語れず、違和感をずっと抱いていた。ソーシャルワーカーは、「人と環境」の両者に同時的に働きかけて行く存在なのだという生態学的視点から実践を検証することで、「環境(体制・制度・システム)」を変える取り組みも含めた総体が「私のソーシャルワーク実践であった」と、今は腑に落ちている。
振り返って本書の編集は、「現場実践に必要なものは何か?」をテーマに構成し、実践から生まれた内容だったため、まさに生態学的視点に貫かれていたと改めて確認できた。そこで、第1章の「医療ソーシャルワーク実践指針」を「人―環境の視点」生態学的視点から記述し、本書の柱立てとさせていただいた。
本書は「保健医療サービス」ではなく、あくまでも「医療ソーシャルワーク論」であるとのスタンスである。願わくば「保健医療サービス」の基礎を学んだ後に、実践を視野に入れた本書を手にしていただきたいとの思いである。
(「序」より)
推薦の言葉

改訂2版序

初版序

第1章 医療ソーシャルワーク実践指針
 1.医療ソーシャルワーカーの人間観
 2.生態学的視点による医療ソーシャルワーカーの役割
 3.チェンジ・エージェントとしての医療ソーシャルワーカーの役割

第2章 医療福祉環境の変化と医療ソーシャルワーカー
 1.医療政策・社会福祉政策の変遷
  1.医療制度改革の方向
  2.医療・福祉制度改革の具体的展開−「医療と介護の連携」
  改訂版追補

 2.新しい医療環境における医療ソーシャルワーカー機能
  1.新しい医療提供体制下における病院経営のサービスモデルの多様化
  2.病院経営の進化と医療ソーシャルワーカー機能

 3.医療ソーシャルワーカー実践の場の分化
  1.医療機能分化とは
  2.医療機能分化と医療機関が置かれている現状
  3.医療機関の機能分化と医療ソーシャルワーカー実践
  4.精神保健医療の動向と精神科ソーシャルワーカー

第3章 医療ソーシャルワーカー業務の変化
 1.医療ソーシャルワーカーの業務実践の変化と退院援助
  1.退院援助実施率の激増
  2.退院援助業務増大の背景
  3.退院援助における医療ソーシャルワーカーの大義
  4.退院援助のあり方

 2.退院援助の実際と退院援助システム化の創設(院内)
  1.東京大学医学部附属病院医療社会福祉部
  2.医療社会福祉部の退院援助へ果たす役割
  3.院内においてのネットワークづくり

 3.退院援助の実際と退院援助システム化の創設(院外)
  1.名古屋第二赤十字病院の現状
  2.病病連携システム構築の経過と概要
  3.病院内のシステム化
  4.病院外のシステム化
  5.病院・施設機能(一般病棟、療養病棟、介護保険適用施設等)の概略
  6.病院・施設の機能評価
  7.在宅療養のシステム
  8.退院時連絡会の開催
  9.八事整形医療連携会の取り組み
  10.医療社会事業課を中心とする連携の取り組み

第4章 医療ソーシャルワーカー業務と実践環境整備
 1.「医療ソーシャルワーカー業務指針」の意味と活用法
  1.医療ソーシャルワーカー業務指針の意味
  2.「業務指針」 の活用法

 2.医療ソーシャルワーカー業務指針
  1.業務指針改正の趣旨
  2.業務の範囲
  3.業務の方法

 3.医療ソーシャルワーカーの組織的位置付けの重要性
  1.医療ソーシャルワーカーの組織的位置付けの意味
  2.組織的位置付けの向上を求めて

第5章 医療ソーシャルワーカー業務スキル
 1.医療ソーシャルワーカーのスキル構造
  1.スキルの統合
  2.スキルの強化・進化

 2.医療福祉アセスメント
  1.介護保険のアセスメント
  2.社会福祉アセスメント
  3.医療福祉アセスメント
  4.効果的な医療福祉アセスメント
  5.医療福祉アセスメントシートを記入することの効果
  6.医療福祉アセスメントの事例

 3.社会資源の活用
  1.ソーシャルワークと社会資源
  2.社会資源の情報を活用する際の留意点
  3.事例−地域の施設という社会資源をどう活用するか

 4.社会資源の創設
  1.利用できる社会資源
  2.精神障害者共同作業所クローバータウンの設立
  3.精神障害者共同作業所なごみ作業所の開設
  4.可笑屋の設立

 5.医療福祉の連携
  1.今日的事情と地域連携
  2.医療福祉連携の具体的実践
  3.今後の課題

 6.保健医療サービスにおける専門職の役割と実際
  1.医師
  2.看護師
  3.保健師
  4.理学療法士
  5.作業療法士
  6.言語聴覚士
  7.薬剤師
  8.管理栄養士
  9.医療事務

 7.業務報告のあり方とその実際
  1.医療ソーシャルワーカーにとっての業務報告書提出の意義
  2.組織における業務報告書提出の意義
  3.業務報告書の実際

 8.医療ソーシャルワーク業務と電子カルテシステム
  1.島根県立中央病院の統合情報システム、Shimane−IIMSの概要
  2.電子カルテシステムを利用したソーシャルワーク援助
  3.ソーシャルワーク記録画面について
  4.チーム医療と電子カルテ
  5.電子カルテ導入のメリット
  6.課題
  7.まとめ

 9.診療報酬を読み解く知識
  1.なぜ医療ソーシャルワーカーに診療報酬を読み解く知識が必要なのか
  2.診療報酬の基礎知識
  3.診療報酬の仕組み
  4.診療報酬の歴史
  5.医療経営における医療ソーシャルワーカー業務の貢献

第6章 医療機関機能分化と医療ソーシャルワーカー業務実践
 1.特定機能病院
  1.特定機能病院とは何か
  2.特定機能病院の誕生
  3.特定機能病院になる
  4.ソーシャルワーク部門について
  5.医療ソーシャルワーカーの業務の実際
  6.今後の課題

 2.地域医療支援病院
  1.地域連携とは何か
  2.地域医療支援病院の特徴と医療ソーシャルワーカーの役割

 3.回復期リハビリテーション
  1.回復期リハビリテーション病棟とは何か
  2.医療ソーシャルワーカー援助の特徴
 
 4.亜急性期病床における医療ソーシャルワーク
  1.亜急性期病床とは
  2.実践事例
  3.まとめ

 5.療養型病床群
  1.療養型病床群とは何か
  2.医療ソーシャルワーカーの実践の特質
  3.実践事例
  4.課題

 6.緩和ケア
  1.緩和ケアとは
  2.緩和ケアにおけるソーシャルワーカーの役割
  3.今後の課題

 7.精神科病院
  1.組織上の位置付け
  2.精神科病院の特質
  3.医療ソーシャルワーカーの業務の特質
  4.精神科病院のソーシャルワーカーの事例−長期入院の統合失調症患者の退院事例−
  5.地域生活移行(退院促進)支援
  6.地域生活支援と病院医療ソーシャルワーカー

第7章 医療ソーシャルワーカーの国家資格化
 1.日本医療社会事業協会の歴史と医療ソーシャルワーカーの国家資格化をめぐる動き
 2.医療ソーシャルワーカーの国家資格化実現を求めて


付録:別表 わが国の医療制度・医療保険制度改革および介護保険制度創設の経緯

改訂2版あとがき

初版あとがき