アトラス 皮膚および粘膜のカンジダ症

貴重な症例を満載した本邦初のアトラス本。この1冊でカンジダ症のすべてがわかる

著 者 東 禹彦
定 価 11,000円
(10,000円+税)
発行日 2011/07/20
ISBN 978-4-307-40049-7

A4判・145頁・カラー図数:200枚

在庫状況 あり

カンジダ感染により生ずる様々な症例を集めた世界でも珍しいアトラス本です。基礎的な記載もほどよい量でわかりやすく、大半を占める臨床的な部分では、貴重な写真・症例が満載。この本を読めば非典型例を含め、診断の難しさがよくわかります。口腔ならびに舌病変は、皮膚科医だけではなく耳鼻咽喉科医、口腔外科医、内科医にとっても参考になります。今後、高齢化、ステロイドの濫用などによりカンジダ症が増える可能性は大いにあり、各大学、大病院にも備えておくべき本です。


『はじめに』より
 私が皮膚のカンジダ症に興味を持つようになったのは皮膚科医になってまもなく、1964年にカンジダ性肉芽腫と出会ったことである。本書でも紹介するが、アムホテリシンB以外に適切な治療薬もない時代に、大変な苦労を重ねて治癒に導いた。また、丁度同じころに、全身の皮膚カンジダ症で一部では深在性となっている症例に出会ったことも大きかった。要するに、消化管の常在菌であるカンジダが皮膚や粘膜に様々な病型の感染を生じることに興味を抱いたのである。また、1970年ごろから乳児寄生菌性紅斑(おむつ部のカンジダ症)の患者が急増した。キノホルムは多くの細菌に対して有効な薬剤であったが、同時にカンジダに対しても有効であった。キノホルムは内服でも使用されていたが、外用薬としても広く使用されていた。乳児寄生菌性紅斑の急増はキノホルムの使用禁止と関連しているように思えた。
 以前は、カンジダに有効な副作用の少ない、内用で有効な抗真菌薬がなかったために治癒に至らなかった症例も多く経験した。アムホテリシンBやナイスタチンは腸管から吸収されないという欠点があった。カンジダに有用な内用の抗真菌薬は1979年にフルシトシンが、1989年にフルコナゾールが、ついでイトラコナゾールが発売され、難治であった一部のカンジダ症も治癒する疾患となった。
 カンジダ症の診断では病変部からの材料の直接鏡検が一番大事であるので、ステロイド含有外用薬を使用し、軽快しないときにはぜひとも直接鏡検を行うことが必要である。
 このアトラスでは、私がこれまでに経験し、発表した様々な皮膚および粘膜のカンジダ症を紹介しているが、口腔のカンジダ症に関しては本邦での成書の記載と異なる点がかなりある。例えば、正中菱形舌炎は限局性の慢性カンジダ症であることはかなり以前(1980年ごろ)に確定しているが、本邦の成書では依然として古い記載のままである。現在では良い治療薬の出現で治癒する疾患となっている。舌のカンジダ症については臨床所見をぜひ参考にしていただきたい。
 本書が臨床の現場で役立つことを願っている。

1.カンジダとは
 1.菌学
 2.カンジダの検出頻度
 3.起因菌としてのカンジダ
 4.1970年代の皮膚カンジダ症の増加とキノホルムの禁止
 5.カンジダ症の診断:直接鏡検
 6.組織中のカンジダの証明
 7.カンジダは消化管から血中に入るか
 8.カンジダは皮膚表面から表皮有棘層に侵入するか

2.皮膚および粘膜のカンジダ症に有効な抗真菌薬
 1.経口薬および注射薬
 2.外用薬
 3.膣錠

3.皮膚カンジダ症
 1.おむつ部のカンジダ症(乳児寄生菌性紅斑)
 2.汗疹様カンジダ症
 3.先天性皮膚カンジダ症
 4.腋窩部カンジダ症
 5.乳房下カンジダ症
 6.成人陰股部カンジダ症
 7.指間部カンジダ症(カンジダ性指間びらん症)
 8.人為的な原因による皮膚カンジダ症
  a)包帯下に生じたカンジダ症
  b)おむつの圧迫部位に生じたカンジダ症
  c)手指絆創膏下カンジダ症
 9.手掌のカンジダ症
 10.角化型皮膚カンジダ症
  a)カンジダ性肉芽腫
  b)頭部の角化型皮膚カンジダ症
  c)生毛部皮膚の角化型カンジダ症
 11.カンジダ性口角びらん症
 12.口唇のカンジダ症:カンジダ性口唇炎
 13.外耳道のカンジダ症
 14.カンジダ性毛包炎およびカンジダ性毛瘡
 15.全身性皮膚カンジダ症

4.爪カンジダ症
 1.カンジダ性慢性爪郭炎
 2.カンジダ性爪甲剥離症
 3.爪甲カンジダ症

5.粘膜のカンジダ症
 1.舌カンジダ症
  a)急性偽膜性舌カンジダ症(鵞口瘡)
  b)萎縮性舌カンジダ症
  c)正中菱形舌炎(慢性限局性増殖性舌カンジダ症)
  d)カンジダ性白板症
  e)カンジダ性舌背潰瘍
 2.頬粘膜のカンジダ症
 3.外陰・膣のカンジダ症
 4.陰茎・亀頭部のカンジダ症
 5.肛門粘膜のカンジダ症
 6.ストーマのカンジダ症

6.深在性皮膚カンジダ症
 1.限局性深在性皮膚カンジダ症
 2.全身性深在性皮膚カンジダ症

索引