きこえと遺伝子 改訂第2版 難聴の遺伝子診断とその社会的貢献

難聴医療に変革をもたらした名著が、10年目の大改訂!

編 著 宇佐美 真一
定 価 4,104円
(3,800円+税)
発行日 2015/07/01
ISBN 978-4-307-37111-7

B5判・192頁

在庫状況 あり

2006年に発刊され、難聴医療に変革をもたらした名著「きこえと遺伝子」が10年目にして大改訂を行い、リニューアルした。総ページはほぼ倍の192ページとなり、この10年の目覚ましい進歩を物語っている。改訂版では遺伝子解析の最新技術、遺伝カウンセリング、臨床で見出される難聴遺伝子についての最新の情報を盛り込み、難聴の遺伝子医療に必要な知識を網羅した。今や遺伝子診断は難聴医療に携わる上で、必要不可欠な診断ツールとなっている。
1 遺伝子とは
 1-1 遺伝子とは
 1-2 遺伝子からタンパク質へ
 1-3 ミトコンドリア遺伝子──もう一つのDNA
 1-4 遺伝子変異と遺伝子多型
 1-5 変異は誰でも持っている
 1-6 遺伝子変異と難聴
 1-7 メンデル遺伝性の難聴と多因子遺伝性の難聴
 1-8 メンデル遺伝性の難聴
 1-9 多因子遺伝性の難聴

2 なぜ遺伝子診断か
 2-1 先天性難聴の原因
 2-2 遺伝性難聴の分類
 2-3 難聴の疫学
 2-4 遺伝子診断のメリット

3 内耳における遺伝子の局在と役割
 3-1 蝸牛における難聴遺伝子の局在とその役割
 3-2 内有毛細胞──振動を電気信号に変換するセンサー細胞
 3-3 外有毛細胞──振動を増幅するアンプ
 3-4 内柱細胞・外柱細胞──有毛細胞を支える柱
 3-5 内指節細胞・内境界細胞・外指節細胞──コルチ器におけるグリア様細胞
 3-6 ラセン隆起──コルチ器における重炭酸イオン、塩化物イオン、ヨウ素イオン輸送の中心
 3-7 血管条──メカノトランスダクションの動力源
 3-8 蓋膜──メカノトランスダクションの効率化に寄与
 3-9 ライスネル膜──内リンパ液と外リンパ液を分ける隔壁
 3-10 前庭の構造と遺伝子発現
 3-11 難聴原因遺伝子の発現と症候群
 3-12 遺伝子発現からみた臨床像、介入のアウトカム予測

4 難聴遺伝子解析技術の進歩
 4-1 連鎖解析による原因遺伝子の特定
 4-2 直接シーケンス法
 4-3 PCR─RFLP法
 4-4 インベーダー法
 4-5 超並列シーケンス法──次世代シーケンス法
 4-6 CNVs
 4-7 原因遺伝子であることの検証
 4-8 臨床検査としての精度管理

5 遺伝子診断を軸にした難聴医療
 5-1 新生児聴覚スクリーニングとその後の検査のプロセス
 5-2 聴覚検査──ABR、ASSR、COR、PTA
 5-3 画像検査と遺伝子──EVA、IP─II、IP─III、蝸牛奇形、蝸牛神経低形成
 5-4 補聴器
 5-5 人工内耳──マッピング、遺伝子ごとの言語発達
 5-6 残存聴力活用型人工内耳

6 難聴の遺伝カウンセリング
 6-1 遺伝カウンセリングの基本理念
 6-2 遺伝カウンセリングの対象
 6-3 遺伝カウンセリングの診療体制
 6-4 遺伝カウンセリング担当者
 6-5 難聴に関連した遺伝カウンセリングの実際
 6-6 信州大学医学部附属病院の取り組み

7 日本人難聴患者に見出される難聴遺伝子
 7-1 GJB2遺伝子
 7-2 SLC26A4遺伝子
 7-3 ミトコンドリア遺伝子1555 A>G変異
 7-4 ミトコンドリア遺伝子3243 A>G変異
 7-5 CDH23遺伝子
 7-6 KCNQ4遺伝子
 7-7 TECTA遺伝子
 7-8 WFS1遺伝子
 7-9 OTOF遺伝子
 7-10 COCH遺伝子
 7-11 MYO15A遺伝子
 7-12 MYO6遺伝子
 7-13 TMPRSS3遺伝子
 7-14 ACTG1遺伝子
 7-15 CRYM遺伝子
 7-16 COL9A3遺伝子
 7-17 Usher症候群の原因遺伝子
 7-18 EYA1遺伝子
 7-19 NOG遺伝子

8 難聴遺伝子のルーツ

あとがき
改訂第2版 序

 難聴は言うまでもなく症状名であり診断名ではない。内科医が腹痛という症状の原因を調べ最適な治療を考えるのと同様に、耳鼻咽喉科医が難聴という症状の原因を調べ、原因に応じた最適な医療を提供するのはごく自然な診療プロセスである。難聴の遺伝子診断は先進医療を経て2012年から保険診療として日常臨床で実施できるようになった。遺伝子診断により難聴児の原因が科学的に解明され、難聴の程度の予測、進行性の有無、合併症の推測、各々に適したオーダーメイド治療や予防について有用な情報が得られるようになっている。さらに、次世代シーケンサーを用いた遺伝子診断の実用化も進められ、臨床現場で用いるところまで来ている。
 治療面では人工内耳の登場によって重度難聴の患者でも聴覚を利用して言語を習得することが可能になった。2014年にはわが国の小児人工内耳の適応基準が改定され、手術の低年齢化、両耳装用に加え、遺伝子診断が適応基準に追加された。人工内耳の効果には年齢を始め多くの因子が関与しているが、原因が内耳に存在することが明らかとなれば、人工内耳の効果が期待できることから、遺伝子診断は人工内耳の適応や効果予測にも重要であることが明らかになってきた。
 本書は2015年5月に開催された第116回日本耳鼻咽喉科学会の宿題報告「難聴の遺伝子診断とその社会的貢献」でまとめられたモノグラフを「きこえと遺伝子」の改訂版として出版したものである。旧版の出版から10年近くが過ぎたが、この間の難聴の遺伝子診断の進歩には目覚ましいものがある。この改訂版では遺伝子解析の最新技術、遺伝カウンセリング、臨床で見出される難聴遺伝子についての最新の情報を盛り込み、難聴の遺伝子医療に必要な知識を網羅した。
 我々が提案、実践してきた「遺伝子診断を軸にした難聴医療」が今後全国で定着し広まっていくことを期待している。

2015年6月

宇佐美 真一