一問一答! 腰痛のエビデンス

著者でしか語れない!新たな視点から「腰痛のエビデンス」を検証した待望の書、刊行!

著 者 菊地 臣一
定 価 4,320円
(4,000円+税)
発行日 2018/02/01
ISBN 978-4-307-25162-4

B5判・220頁・図数:17枚・カラー図数:5枚

在庫状況 あり

「病態編」「診断編」「治療編」の3編で構成。痛みと脳の関係やオピオイドの可能性と課題、代替療法の有効性など、腰痛をめぐる最新のトピックも含んだ「疑問」を立て、それらに対して国内外の多数の文献や著者の豊富な臨床経験を元に検証を行った。一問一答形式で「何がどこまでわかっているのか」が明快に示されており、読者の興味のあるトピックから読むこともできる。腰痛診療に携わるすべての医療従事者の痒いところに手が届く、待望の一冊。
【病態編】

疑問1 腰痛は科学か?
1-1 science(科学)だけで医療は十分か? -重要なNBMの概念-  
1-2 テクノロジーに頼る現代医療の危機を認識しているか?  
1-3 医療従事者の対応が治療成績や満足度向上の鍵であることを知っているか?  
1-4 疾患や医療に対するストレスの影響を考えているか?  
1-5 プラセボ効果を意識しているか?  
1-6 身体と精神の関係を見直すべきではないのか? −原点への回帰−  

疑問2 腰痛は二足歩行の宿命か?

疑問3 腰痛は加齢に伴う症状か?
3-1 腰痛は高齢者特有の症状か?  
3-2 近年の海外の疫学調査でわかったことは何か?  
3-3 腰痛の自然経過はどうなっているのか?  
3-4 腰痛と年齢の関係はどうなっているのか?  
3-5 小児の腰痛は本当に稀なのか?  

疑問4 腰痛は脊椎の変性が主たる原因か?
4-1 腰痛の捉え方はどう変遷してきたか?  
4-2 腰痛と外傷との関係はどうなっているのか?−腰痛外傷説(損傷モデル)への疑問−  
4-3 腰痛と文化の関係は明らかになっているか?  
4-4 腰痛に関与する心理・社会的因子にはどのようなものがあるのか?−心理的因子−  
4-5 腰痛に関与する心理・社会的因子にはどのようなものがあるのか?−社会的(環境)因子−  
4-6 腰痛に関与する心理・社会的因子にはどのようなものがあるのか?−戦場と疼痛−  
4-7 青少年の慢性疼痛に心理・社会的因子は関与しているか?  
4-8 椎間板と腰痛の関係はどこまでわかってきたか?  
4-9 椎間板以外の組織の疼痛への関与はどこまで明らかになったか?  
4-10 腰痛の原因としての新たな候補にどのような関与因子があるのか?  

疑問5 腰痛はなぜ苦悩や苦痛を伴っているのか?

疑問6 腰痛と肥満は関係があるのか?

疑問7 慢性腰痛には、癌、寿命、生育期の環境、睡眠障害が関与している?
7-1 慢性疼痛と寿命との関係はどうなっているのか?  
7-2 生育期の環境による影響はあるのか?  
7-3 疼痛と睡眠との関係はどうなっているのか?  

疑問8 腰痛を知るには脳を知る必要がある?

疑問9 慢性腰痛に対する新たな視点とは何か?

疑問10 良い姿勢とは? ─私の疑問─

疑問11 超高齢社会における腰痛の課題は何か?
11-1 殿部痛の発痛源はどこか?  
11-2 腰椎変性側弯の課題は何か?  
11-3 膝内側部痛と腰由来の痛みの診断を間違っていないか?  

疑問12 腰部脊柱管狭窄の症状は最も狭い高位で発生するのか?

疑問13 椎間板ヘルニアによる疼痛は常に椎間板の後方突出を伴っているのか?

疑問14 神経性間欠跛行を伴う腰部脊柱管狭窄の症例と伴わない症例の違いは何が原因か?


【診断編】

疑問1 腰痛の診断に問題はないのか?

疑問2 画像診断の価値は決定的か?
2-1 MRI検査の価値はどの程度あるのか?  
2-2 MRI撮像実施上の工夫はどうしているのか?  
2-3 X線被曝による発癌の危険性はあるのか?  
2-4 症状とMRIの所見との関係は明らかになっているのか?  
2-5 画像で腰痛がわかるか?  

疑問3 神経根圧迫を安易に捉えていないか?


【治療編】

疑問1 治療成績評価基準が変わったのを認識しているか?

疑問2 腰痛の予防は可能なのか? 

疑問3 教育・啓発活動は腰痛による活動障害を減らせるか?

疑問4 治療方針の基本は何か?

疑問5 新しい概念(医学の進歩)による介入は治療成績を向上させたか?
5-1 診療ガイドライン作成の背景は何か?  
5-2 診療ガイドラインは腰痛診療を変えたか?  
5-3 新たな概念に基づいた治療の組み立ての課題は何か?−求められている新たな視点−  
5-4 診療の内容が患者に正しく伝えられているか?  

疑問6 祈りは治療手段として有効か?

疑問7 腰痛の治療では局所を冷やしたほうがよいのか、温めたほうがよいのか?

疑問8 運動療法の有効性は何に由来するのか?
8-1 非特異的腰痛に対する運動療法は有効か? −有効性の確認−  
8-2 運動療法の内容や種類で有効性に差はあるか?  
8-3 運動療法の有効性の機序はわかっているのか?  
8-4 運動の重要性はどの程度わかっているのか?  
8-5 ウォーキングは有効か?  
8-6 治療としての安静の価値はあるのか?  
8-7 座位は健康のリスク因子か?  

疑問9 鎮痛薬物療法は腰痛に対して有効か?
9-1 鎮痛薬やNSAIDsの有効性とリスクはどの程度わかっているのか?  
9-2 アセトアミノフェン第1選択に疑問はないのか?  
9-3 鎮痛薬の併用は有効か?  
9-4 オピオイドの可能性と課題は何か?  

疑問10 ブロック療法は有効か?

疑問11 代替療法は有効か?
11-1 代替療法はどの程度行われているのか?  
11-2 代替療法の有効性はどの程度立証されているのか?  
11-3 脊椎マニピュレーションの有効性に疑問符?  

疑問12 保存療法で有効な手技は何か?

疑問13 作業関連腰痛に対する人間工学的なアプローチは有効か?

疑問14 新たな保存療法にはどのような種類があるのか?
14-1 認知行動療法の有効性はどこまでわかっているのか?  
14-2 マインドフルネスの有効性はどこまでわかっているのか?  
14-3 音楽の有効性はどこまでわかっているのか?  
14-4 脳のザッピングの有効性はどこまでわかっているのか?  

疑問15 変性疾患に対する手術の有効性はどの程度明らかにされているのか?
15-1 脊椎外科医の間に大きな見解の不一致があるのはなぜか?  
15-2 脊椎手術の実施率に著しい地域差があるのはなぜか?  
15-3 術者による手術成績の差に何があるのか?  
15-4 手術をめぐるジレンマ(dilemma)はないのか?  
15-5 椎間板ヘルニアに対する手術の有効性はどの程度明らかにされているのか?  
15-6 腰部脊柱管狭窄に対する手術の有効性はどの程度明らかにされているのか?  
15-7 腰痛に対する固定術の有効性は立証されているのか?  
15-8 なぜ、固定術の実施率が急上昇しているのか? −高まる批判−  
15-9 椎間板性腰痛に対する固定術の有効性は確立されているのか?−検証法の不確実性−  
15-10 固定術の有効性は確立されているのか?  
15-11 固定術による疼痛緩和効果は十分か?  
15-12 変性すべり症に対する除圧と除圧・固定術併用を比較した研究はあるか?  
15-13 人工椎間板は最終的な治療か、あるいは一時的流行か?  
15-14 下肢痛を伴わない腰痛に対する手術(固定術)の有効性は確立しているのか?  
15-15 骨粗鬆症性椎体骨折に対する椎体形成術の評価は確立されているのか?  
15-16 手術成績にはどのような因子が関与しているのか?  
15-17 脊椎外科の費用対効果はわかっているのか?  
15-18 高齢者に対する手術の問題は何か?  
15-19 椎間板手術後におけるリハビリテーションは有効か?  
15-20 術前における患者との意思疎通は十分か?  
15-21 文献から脊椎外科医が学ぶことは何か? −脊椎外科医への問いかけ−
はじめに

 我が国の整形外科医は、仕事の内容が海外の整形外科医とはかなり異なります。欧米の整形外科医は、手術を主体とした専門医の集団です。一方、我が国では、脊椎手術の専門医であるとともに、プライマリケア医としての仕事も要求されています。そのため、仕事の中で、欧米の整形外科医では守備範囲になっていない保存療法、あるいは、予防に対する専門的知識や技術も要求されます。
 その違いは、受け持っている領域の違いをみてもわかります。欧米の整形外科医は、骨関節の外科です。一方、我が国では、骨関節外科は当然、そのほか、関節リウマチ、スポーツ医学、骨粗鬆症に代表される代謝内科、さらには、救急、そして脊椎脊髄外科のすべてを守備範囲としています。その結果、我が国の整形外科医は、広範な領域を受け持っているが故に、外来を受診する患者が極めて多く、多忙を極めます。
 このように、我が国では運動器の守備範囲が広いが故に、腰痛の診療でも、手術だけ行っていれば良いということにはなりません。腰痛の大分部を占める非特異的腰痛も運動器診療の守備範囲です。腰椎の手術のみならず、腰痛の保存療法、あるいは予防、そして術後のリハビリテーションまで含めた腰痛のすべてを受け持っています。
 このような我が国の腰痛の診療の特異性から、腰痛に関しては、プライマリケアとしての腰痛を含め、腰痛に関するあらゆる情報を入手し、その評価をしなければなりません。そして、その成果を日々の日常診療に反映させる必要があります。その際、道標(みちしるべ)となるのがEBM(evidence-based medicine)です。EBMは平均値による結論ですが、医療従事者のartを生かすためにもEBMが基本に存在する必要があります。
 本書では腰痛についてそのような観点に立って述べてみます。

2018年1月
菊地 臣一