膵癌取扱い規約 第7版

解剖、臨床、病理とも大幅な変更と追加が行われた画期的な改訂版です

編 集 日本膵臓学会
定 価 4,104円
(3,800円+税)
発行日 2016/07/20
ISBN 978-4-307-20358-6

B5判・136頁・図数:20枚・カラー図数:127枚

在庫状況 あり

全領域で画期的な改訂と説明の強化が行われた。解剖では膵臓の区分や膵外神経叢が全面的に見直され、臨床では原発巣・転移の評価と進行度分類にUICC-TNMとの整合性が図られた他、画像による浸潤の判定、切除可能性分類が新設された。病理では組織型分類をWHO分類に整合し、生検、細胞診、術前治療後の組織学的治療効果判定基準を新たに収載した。結果、ページ数は前版の2倍となるも定価は最小限の引き上げに抑えた。
略語
規約摘記
規約記載上の病理チェックリスト

I.緒言(目的および対象を含む)
II.記載法の原則
III.所見の記載法
 1.原発巣の記載
  1)腫瘍占居部位
  2)病巣の数と大きさ(TS)
  3)肉眼型分類
  4)膵局所進展度(T)
   (1)T分類
   (2)T因子記載における画像診断指針
   (3)T因子のCT画像の実際(病理との対比)
 2.リンパ節転移の記載
  1)リンパ節の名称
   (1) 膵臓に関連するリンパ節の番号・名称・境界
   (2) 膵臓に関連するリンパ節の番号とリンパ節転移のCT診断基準
  2)領域リンパ節
  3)リンパ節転移の記載法
   (1)リンパ節転移の程度(N)
   (2)リンパ節転移度
 3.遠隔転移の記載(M)
  1)腹膜転移(P)
  2)肝転移(H)
 4.進行度(Stage)
 5.切除可能性分類
  1)切除可能性分類
  2)切除可能性分類におけるCT画像の実際
IV.外科的治療
 1.手術の種類
1)手術の内容
  2)手術の到達法
 2.膵切除術式の記載
  1)切除術式の種類
  2)合併切除臓器
  3)再建術式の種類
   (1)PD、PPPD、SSPPD後の再建術式
   (2)膵再建法の種類
 3.リンパ節郭清度の分類(D)
 4.腫瘍遺残度の評価(R)
  1)膵切除断端(PCM)
  2)胆管切除断端(BCM)
  3)膵周囲剥離面(DPM)
V.治療成績
 1.患者数
 2.予後調査
 3.死因
 4.再発形式
 5.生存率
VI.切除材料の取扱いと検索方法
 1.切除膵(または摘出膵)の取扱い
 2.切り出し方法
  1)膵頭十二指腸切除標本の場合
  2)膵体尾部切除標本の場合
  3)膵全摘標本の場合
 3.腹腔細胞診の実施方法
VII.膵腫瘍の組織所見
 1.膵腫瘍の組織型分類
  [1]上皮性腫瘍
  [2]非上皮性腫瘍
 2.癌の間質量
 3.癌の浸潤増殖様式(INF)
 4.リンパ管侵襲(ly)
 5.静脈侵襲(v)
 6.神経浸潤(ne)
 7.主膵管内進展(mpd)
8.組織学的分類の説明
  [1]上皮性腫瘍
  [2]非上皮性腫瘍
  ■病理図譜
VIII.膵腫瘍の生検・細胞診所見
 1.膵生検組織診断報告
  ■生検図譜
 2.膵細胞診断報告
  1)報告様式と判定
  2)腹腔洗浄細胞診(CY)の判定区分
  3)疾患、各膵腫瘍
  ■細胞診図譜
IX.術前治療後の組織学的評価
 薬物・放射線治療後の組織学的効果判定基準
 薬物・放射線治療後の組織学的所見
 組織学的治療効果判定例(Grade 2)

付.TNM分類(UICC)第7版(2009)
 本邦では1980年10月に手術所見記載、病理学的検索および組織学的分類を共通の基準の下に検討する手段として「外科・病理 膵癌取扱い規約(第1版)」が発刊された。その後、改訂を重ね1996年には日本語版に改訂を加えた英語版が発刊され国際的にも用いられるようになった。一方、欧米ではUICCにより1987年に膵癌のTNM分類とStage分類が作成され、2009年にはUICC第7版が発刊され広く用いられている。両規約ともTNM分類を用いているが、本邦の規約は多くの臨床情報の記録を、UICCでは臓器横断的なシンプルな表現を重視していたために、T分類、N分類、Stage分類が著しく異なったものとなり、本邦と欧米との膵癌治療成績を比較するうえで大きな障害となっていた。それ故に、本邦の規約の長所を保持しつつ、国際標準に整合性をもって対応可能な新規約を作成することが望まれてきた。
 2013年4月より規約第7版の改訂に向けて(1)TNM分類とStage分類の再考、(2)切除可能性分類(Resectability: Resectable、Borderline resectable、Unresectable)の導入、(3)画像診断による判定基準の導入、(4)病理分類をWHOとの整合性をはかることの4点を最重点項目として協議を開始した。さらに、術前加療が積極的に行われてきている現状をふまえて生検診断、細胞診、術前治療後の組織学的治療効果判定基準の策定などの新規項目を加えることとした。このため、規約検討委員を25名(外科12名、内科4名、病理7名、画像診断1名、解剖1名)に増員し、計7回の委員会にて協議を重ねて、2015年10月に規約第7版草案を作成した。この草案を日本膵臓学会ホームページに公開しパブリックコメントを求めると共に、11月には公聴会(第77回日本臨床外科学会総会、福岡)を開催して幅広い層からの多数のご意見を頂いた。これを受けて規約検討委員会にて再検討を行うと共に、特に本邦独自の膵頭神経叢を含む膵外神経叢の抜本的見直しのために「膵外神経叢ワーキンググループ」を新たに招集して討議を重ねたすえ、2016年3月に第8回規約検討委員会をもって完成するに至った。
 今回の改訂では、大幅な改訂とCT画像を含めた新規項目を追加したため、第6版補訂版の57頁から倍以上の121頁へ増加している。実地臨床に用いやすいように巻頭には記載項目を規約摘記としてまとめ、詳細は本文で記載することとし、日本膵臓学会全国膵癌登録症例のデータから検討した各因子やStageごとの成績なども掲載した。膵癌診療ガイドラインとも歩調を合わせており日常臨床に活用されるとともに、本規約に基づいて蓄積されたデータからなる研究成果が世界に発信されることを望む。

 今回の改訂および新規項目の要点は、以下の如くである。
<改訂項目>
●腫瘍占居部位:膵体部と尾部の境界を大動脈左縁に変更した。
●T分類:T3、T4分類をUICCのTNM分類(第7版)に準じて上腸間膜動脈(SMA)と腹腔動脈(CA)への浸潤の程度にて分類した。さらに、T1分類はIPMNへの将来的な活用も視野に入れて、腫瘍の大きさに応じてT1a、T1b、T1cと亜分類した。
 ・膵外神経叢の解剖学的再検討を行い新たな図を作成し、手術写真とともに掲載した。
●N分類:群分類から領域リンパ節内の転移個数による分類にした。領域リンパ節内の転移個数によって1〜3個までの転移をN1a、4個以上の転移をN1bに亜分類した。
●Stage分類:UICCのStage分類(第7版)と整合性をもたせ、予後の層別化よりも切除可能性分類と対照させて、治療計画作成に役立つことを重視した。Stage IIまでは切除可能(R)または切除可能境界(BR―PV)膵癌、Stage IIIは切除可能境界(BR―A)または局所進行切除不能膵癌(UR―LA)、StageIVは遠隔転移(UR―M)とした。
●記載方法の作成および修正
 ・癌浸潤の有無を(−)(+)から0、1に表記方法を変更した。
 ・局所腫瘍遺残度の評価(R)にて、R0の場合に断端部からの距離の記載を推奨した。
 ・膵切除断端(PCM)および胆管切除断端(BCM)陽性の場合に上皮内癌のみ(e)か、浸潤癌(i)を記載とした。
 ・癌の浸潤増殖様式の記載法をINFα、β、γからINFa、b、cに変更した。
●病理組織学的分類
 ・WHOの消化器腫瘍分類(2010年)との整合性をはかった。
 ・膵管内腫瘍は、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMNs)、膵管内管状乳頭腫瘍(ITPNs)、膵上皮内腫瘍性病変(PanIN)に分類した。
 ・浸潤性膵管癌は形態学的表記(乳頭腺癌:pap、管状腺癌:tub)から分化度(高分化型:wel、中分化型:mod、低分化型:por)による表記に変更した。

<新規項目>
●CT画像診断:CT画像の診断指針、膵癌の局所進展度の評価方法を提示した。T因子と切除可能性分類別の代表的なCT画像例を提示した。CT画像と病理組織像を比較した。
●切除可能性分類:CT画像に基づいて得られる解剖学的所見のみからなる切除可能性分類を策定した。切除可能(R)、切除可能境界(BR:BR―PV、BR―A)、切除不能(UR:UR―LA、UR―M)とした。
●生検診断、細胞診、術前治療後の組織学的評価を策定した。

2016年6月
日本膵臓学会 膵癌取扱い規約検討委員会
委員長 伊佐地 秀司

【外科】:江川 新一、岸和田 昌之、北川 裕久、里井 壯平、高折 恭一、谷 眞至、
     羽鳥 隆、藤井 努、村上 義昭、山口 幸二、吉富 秀幸
【内科】:伊佐山 浩通、糸井 隆夫、伊藤 鉄英、奥坂 拓志
【病理】 組織診・生検診:福嶋 敬宜、古川 徹、柳澤 昭夫
     細胞診:内藤 善哉、中泉 明彦
     組織学的治療効果判定:内田 克典、眞杉 洋平
【画像】:蒲田 敏文
【解剖】:易 勤
【日本膵臓学会膵癌登録】:水間 正道
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