乳がん標準化学療法の実際 改訂第2版 がん化学療法看護認定看護師とがん専門薬剤師の現状を含めて

「がん専門薬剤師」養成の現状と、「がん化学療法看護認定看護師」の乳がん治療における役割も紹介!

編 集 佐伯 俊昭
定 価 3,960円
(3,600円+税)
発行日 2009/07/03
ISBN 978-4-307-20264-0

B5判・168頁・図数:59枚

在庫状況 なし

乳がん化学療法は目覚ましい発展を遂げつつあります。本書も2006年(平成18年)に初版が発刊され、わずか3年で改訂するに至りました。乳がん診療に従事する多くの医師、そしてコメディカルの方々に本書を使用していただいていると聞いています。本書が多くの皆様に役立ったていることは、執筆者の皆様の現場を知り尽くしたうえでの記述が、読者の皆様のお目にとまったことが理由と解釈しております。
日本乳癌学会が診療ガイドラインを発刊し、質の高い乳がん診療がわが国でも徐々に浸透しつつあります。患者さんへのインフォームドコンセントにおいてもガイドラインを用いて説明すると理解が深まると感じております。しかし、私自身が各種ガイドライン作成に関与して感じたことがあります。それは、ガイドラインはあくまでも特定の集団を対象にした治療方針を示すのみで、一人ひとりの患者さんをどの集団に分け、さらにこの患者さんは何を期待して診療を受けているのかを判断する場面では、われわれ医療者の実力が問われているということです。また、ガイドラインには掲載されていないことが多くあることにも気付きます。
ガイドラインはEBMに基づき作成されていますが、基になるエビデンスをもっと詳細に理解することは重要であります。また、クリニカルクエスチョンにない診療技術も身につけなければなりません。本改訂版では、これらの問題を解決すべく、EBMのエビデンスの解説と、推奨グレードは低くても臨床現場で実際行われている対症療法までも含んだ実戦向きで現場主義の乳がん化学療法のテキストを目指して編集しております。また、医師の強い味方であるコメディカルの皆様のために、「がん専門薬剤師」養成の現状と、「がん化学療法看護認定看護師」の乳がん治療における役割を紹介していただきました。コメディカルの方々にも乳がん標準化学療法のエビデンスについてより深い理解をしていただけることを願います。ご多忙にもかかわらず編集の主旨に賛同いただき、多くの専門家にご執筆いただきました。本書は乳がんと闘う仲間の力の結晶であると信じております。
(「序」より)
推薦のことば



1 皮下埋め込み式ポートを用いた化学療法
  1 ポート・カテーテル
  2 挿入部位
  3 挿入手技
  4 挿入後の管理・実際の使用
  5 合併症と対策

2 術後補助化学療法のトピックス
 1. アンスラサイクリンの役割の再評価
  1 非アンスラサイクリン系薬剤併用による術後補助化学療法のエビデンス
  2 アンスラサイクリン系と非アンスラサイクリン系薬剤の直接比較のエビデンス
  3 トラスツズマブの術後補助療法における心毒性軽減の試み
  4 今後の術後補助化学療法の展開
 2. タキサンの役割一
 3. 高齢者乳がんに対する化学療法の適応
  1 高齢乳がん患者の特性
  2 治療戦略の立て方
  3 化学療法の実際

3 進行・再発乳がん化学療法のトピックス −進行・再発乳がんに対する推奨化学療法
  1 進行・再発乳がん(metastatic breast cancer:MBC)の治療戦略 −化学療法の役割
  2 進行・再発乳がんの治療方針のアルゴリズム、ガイドライン形成の背景
  3 進行・再発乳がんの治療戦略に関する実際的諸問題
  4 進行・再発乳がんに対する推奨化学療法剤、レジメン
  5 推奨化学療法剤、レジメンの背景
  6 化学療法施行に際しての実際的諸問題
  7 日本での新規登場が期待される薬剤
  8 タキサンの薬剤と投与法の選択(どちらのタキサンをどちらの投与法で?)
  9 アンスラサイクリンの適応(アンスラサイクリンの使用は回避できるか?)
  10 非アンスラサイクリンレジメンの有効性

4 局所進行乳がんの化学療法
 1. 局所進行乳がんの標準化学療法
  1 局所進行乳がんとは
  2 治療方針
  3 実際の治療における注意
 2. 局所再発病変に対するMohsペースト外用による緩和療法
  1 Mohsペーストとは?
  2 Mohsペーストの調整方法
  3 問題点・留意点

5 Primary Systemic Chemotherapy
 1. 術前化学療法とpCR
  1 術前化学療法の目的
  2 pCRの定義
  3 pCRの臨床的意義
  4 治療レジメンとpCR
  5 治療効果予測
  6 今後の展望
 2. 術前化学療法と生存率(CQ25)
 3. 術前化学療法のエンドポイントと乳房温存手術
  1 これまでの臨床試験のまとめ
  2 術前化学療法後の乳房温存手術における切除範囲の設定
 4. 術前化学療法後の画像評価
  1 RECIST新ガイドラインの基本
  2 治療前のベースラインの画像
 5. 術前化学療法の病理学的評価
  1 術前療法前の病理診断とER、PgR、HER2状況の判定
  2 術前療法で生じる病理組織学的変化
  3 術前化学療法の組織学的効果判定基準
  4 ホルモン療法剤や分子標的治療薬を用いた術前療法
  5 術前療法の病理学的検索に関する問題点
  6 臨床試験の効果判定における問題点
 6. PET-CTを用いた効果判定
  1 FDG-PETによる早期治療効果判定の意義
  2 FDG-PETによる早期治療効果判定に関する臨床研究
  3 FDG-PETモニターリングの注意点
  4 FDG-PETモニターリングの問題点
  5 今後の展望

6 HER2陽性乳がんの化学療法
 1. 進行・再発乳がん(CQ22)
  1 実際の方法
  2 根拠・説明
 2. 原発性乳がんに対するトラスツズマブの治療
  1 術後補助療法としてのトラスツズマブ投与の現状
  2 解説
  3 今後の展開
 3. ラパチニブの臨床成績
  1 ラパチニブ単剤の成績
  2 抗がん剤との併用療法の成績
  3 ホルモン剤との併用療法の成績
  4 脳転移に対する効果
  5 トラスツズマブ(Herceptin)との併用成績

7 Triple Negative乳がんの治療
  1 TNBCの生物学的特性
  2 TNBCの薬剤感受性
  3 TNBCに対する薬物療法の現況
8 骨転移に対するビスホスホネート療法
  1 骨転移形成のメカニズム
  2 ビスホスホネート
  3 乳がん骨転移症例に対するビスホスホネート治療
  4 ビスホスホネートを用いた乳がん骨転移臨床試験
  5 ビスホスホネートの投与法
  6 ビスホスホネートの抗腫瘍効果

9 経口フッ化ピリミジンを用いた化学療法
 1. 術後補助療法
  1 経口フッ化ピリミジン系薬剤の種類と薬理作用
  2 経口フッ化ピリミジンを用いた術後補助化学療法に関するエビデンス
  3 経口フッ化ピリミジン系薬剤の適応
 2. 進行・再発乳がんの治療
  1 進行・再発乳がんの治療の考え方
  2 経口フッ化ピリミジン単剤療法
  3 経口フッ化ピリミジンの多剤併用療法
  4 経口フッ化ピリミジンの今後の展望
 3. トラスツズマブとの併用療法
  1 実際の方法
  2 根拠・説明

10 推奨グレードCの化学療法
  1 早期乳がん
  2 進行再発乳がん

11 化学療法における支持療法
  1 発熱性好中球減少症(febrile neutropenia;FN)
  2 抗好中球減少に対するG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子:granulocyte-colony stimulating factor)投与について
  3 経口抗菌薬による予防投与について
  4 悪心・嘔吐

12ホルモン感受性乳がんの治療
 1. 補助化学療法
  1 ホルモン感受性の評価
  2 ER/PgR状況と臨床病理像および予後
  3 治療法の選択 −内分泌療法単独か化学療法併用か
  4 化学療法併用の効果について −海外の報告から
  5 閉経状況との関連
 2. 進行・再発乳がんの治療
  1 内分泌療法が適応となる症例
  2 化学療法や分子標的治療と内分泌療法の同時併用

13 がん化学療法看護認定看護師と乳がん治療
  1 がん化学療法認定看護師とは
  2 がん化学療法看護認定看護師がもつ乳がん治療の知識
  3 がん化学療法看護認定看護師は何ができるか

14 がん専門薬剤師養成における現状と展望
  1 はじめに
  2 がん専門薬剤師認定制度誕生の経緯
  3 がん専門薬剤師資格の認定申請要件
  4 がん専門薬剤師養成の現状

索引