小児がん診療ガイドライン 2016年版 第2版

前版の8種類のがん種に加え「その他のまれな腫瘍」と「腫瘍生検・中枢ルート」の2章を新設

編 集 日本小児血液・がん学会
定 価 5,076円
(4,700円+税)
発行日 2016/08/10
ISBN 978-4-307-17070-3

B5判・380頁・図数:8枚

在庫状況 あり

小児固形がんは多くのがん種よりなり、いずれも希少がんの範疇に入る。それゆえ治療方針の意思決定の参考となるものとしての本ガイドライン2016年版では、前版の8種類のがん種に加え「その他のまれな腫瘍」と疾患横断的な「腫瘍生検・中枢ルート」を追加。エビデンスレベルはアウトカム全般(生存、QOLなど)に対する4段階評価、推奨の強さは基本2段階とし「益」と「害」および害以外の不利益のバランスを活かすことを重視した。
ガイドラインの基本的事項

1章 小児肝がん
I アルゴリズム
II はじめに
III クリニカルクエスチョン
CQ1 小児肝がんの治療方針の決定に必要な分類と検査は
CQ2 腫瘍生検は必要か
CQ3 初診時(化学療法前)に切除可能であれば切除した方がよいか
CQ4 肝芽腫に対する腫瘍の完全切除の意義は
CQ5 肝細胞癌に対する腫瘍の完全切除の意義は
CQ6 肝腫瘍切除の前に血管造影は必要か
CQ7 肺転移巣に対する外科療法の役割は
CQ8 小児肝がんに対する肝移植の適応は
CQ9 肝芽腫に対する標準的化学療法は
CQ10 肝細胞癌に対する化学療法の適応は
CQ11 小児肝がんに対する大量化学療法の適応は
CQ12 静注化学療法と比較した動注化学療法(塞栓術を含めて)の意義は
CQ13 肝芽腫に対する放射線治療は有効か
CQ14 再発腫瘍に対する治療方針は
CQ15 難治性小児肝がんに対する新規治療薬は
CQ16 小児肝がん治療における合併症とその対応は

2章 小児腎腫瘍
I アルゴリズム
II はじめに
III クリニカルクエスチョン
CQ1 小児腎腫瘍の治療方針の決定に必要な分類と検査は
CQ2 標準的な外科療法は
CQ3 両側性腎芽腫(stageV)に推奨されるマネージメント・外科療法は
CQ4 StageIの予後良好組織型の腎芽腫に推奨される化学療法は
CQ5 StageIIの予後良好組織型の腎芽腫に推奨される化学療法は
CQ6 StageIII、IVの予後良好組織型の腎芽腫に推奨される化学療法は
CQ7 腎明細胞肉腫に推奨される化学療法は
CQ8 腎ラブドイド腫瘍に推奨される化学療法は
CQ9 腎芽腫症に対する治療方針は
CQ10 安全性を考慮した基本的な化学療法の方針は
CQ11 標準的放射線治療とは。その適応は
CQ12 再発後の治療法は
CQ13 晩期合併症にはどのようなものがあるか
CQ14 再発に対する追跡はどのように行うか

3章 骨肉腫
I アルゴリズム
II はじめに
III クリニカルクエスチョン
CQ1 骨肉腫の治療方針の決定に必要な分類と検査は
CQ2 予後因子で治療法を変更することができるか
CQ3 術前化学療法の治療効果は画像で評価できるか。術前化学療法が著効した場合、縮小手術は可能か
CQ4 低悪性度骨肉腫の治療法は
CQ5 通常型骨肉腫の標準的外科療法は
CQ6 切断、離断を行う際に、どのような検討を行うべきか
CQ7 病的骨折を併発した骨肉腫に対する患肢温存手術の妥当性は
CQ8 通常型骨肉腫の標準的化学療法は
CQ9 一期的に手術可能な通常型骨肉腫に対して術前化学療法は必要か
CQ10 肺転移に対する自家造血細胞移植併用大量化学療法は有効か
CQ11 摘出不能な骨肉腫に放射線治療は有効か
CQ12 骨肉腫肺転移に対する外科療法と化学療法は
CQ13 局所再発を起こした場合の治療法は
CQ14 治療後の経過観察の方法は

4章 中枢神経外胚細胞腫瘍
I アルゴリズム
II はじめに
III クリニカルクエスチョン
CQ1 中枢神経外胚細胞腫瘍の治療方針決定に必要な分類と診断方法は
CQ2 一期的手術の原則とその方法は
CQ3 標準的化学療法と治療期間は
CQ4 術前化学療法の適応は
CQ5 未熟奇形腫に対する化学療法の適応は
CQ6 StageI性腺胚細胞腫瘍に対する外科療法ならびに化学療法の適応は
CQ7 放射線治療の役割は
CQ8 化学療法抵抗性または化学療法後の再発腫瘍に対する治療法は
CQ9 自家造血細胞移植併用大量化学療法の適応と有効性は
CQ10 治療に関連する合併症とその後の経過観察は

5章 網膜芽細胞腫
I アルゴリズム
II はじめに
III クリニカルクエスチョン
CQ1 網膜芽細胞腫の治療方針の決定に必要な分類と検査は何か。腫瘍生検による病理診断は必要か
CQ2 遺伝子検査は行うべきか
CQ3 眼球摘出の適応と播種の危険性は
CQ4 片眼性の眼球温存治療は許容されるか
CQ5 局所治療単独(小線源治療、レーザー、冷凍凝固)の適応は
CQ6 眼球温存治療後、眼底検査で腫瘍が不活化している場合に行う内眼手術は安全か
CQ7 眼球温存のための全身化学療法レジメンは
CQ8 局所化学療法は有効か
CQ9 眼球摘出後の化学療法は必要か
CQ10 遠隔転移など眼球外進展例に対する最適な治療法は
CQ11 全身化学療法で三側性網膜芽細胞腫、眼球内新生腫瘍は予防できるか
CQ12 眼球温存のための放射線外照射の適応およびその照射方法は
CQ13 遠隔転移再発例への治療法は
CQ14 眼球摘出後の経過観察はどのように行うべきか
CQ15 眼球温存治療を行った場合の経過観察はどのように行うべきか
CQ16 家族歴のある場合の経過観察はどのように行うべきか
CQ17 二次がんのスクリーニング検査は必要か

6章 神経芽腫
I アルゴリズム
II はじめに
III クリニカルクエスチョン
CQ1 神経芽腫の治療方針の決定に必要な分類と検査は
CQ2 PET検査は有意義か
CQ3 局所性神経芽腫の生検と一期的切除の適応についての指標は
CQ4 ダンベル腫瘍への椎弓切除の有効性は
CQ5 神経芽腫の内視鏡手術による腫瘍摘出の是非は
CQ6 腹部神経芽腫の手術における腎合併切除の意義は
CQ7 放射線治療の有効性とその適応は
CQ8 術中照射は有効か
CQ9 無治療経過観察の適応と安全性は
CQ10 外科的全摘可能な低リスク群腫瘍に対する標準治療は
CQ11 外科的全摘不能な低リスク群腫瘍に対する標準治療は
CQ12 StageMS腫瘍への放射線治療、化学療法の意義と適応は
CQ13 中間リスク群腫瘍に対する標準治療は
CQ14 神経芽腫のstageIVに対する外科療法の原則は
CQ15 高リスク群に対する寛解導入療法は
CQ16 高リスク群に対する自家造血細胞移植併用大量化学療法の有効性は
CQ17 高リスク群に対する同種移植の有効性は
CQ18 再発腫瘍に対する救済療法は
CQ19 中枢神経系再発への対応は
CQ20 神経芽腫への分化誘導療法は有効か
CQ21 神経芽腫への免疫療法は有効か
CQ22 神経芽腫へのMIBG治療は有効か、その適応は
CQ23 治療効果判定の方法は
CQ24 眼球クローヌス/ミオクローヌス症候群への対応は

7章  横紋筋肉腫
I アルゴリズム
II はじめに
III クリニカルクエスチョン
CQ1 横紋筋肉腫の治療方針の決定に必要な分類と検査は
CQ2 PETは転移巣や腫瘍生存(viability)の診断に有用か
CQ3 生検と一期的手術の適応は
CQ4 傍精巣腫瘍の場合の病期を決定するための同側後腹膜リンパ節郭清(SIRPLND)は再発を減少させるか
CQ5 リンパ節郭清の範囲、方法と意義は
CQ6 化学療法前腫瘍再切除(PRE)の適応は
CQ7 頭頸部原発腫瘍に対する手術方針は
CQ8 四肢原発腫瘍に対する手術方針は
CQ9 膀胱・前立腺原発腫瘍に対する切除方針は
CQ10 遠隔転移巣に対する局所治療の方針は
CQ11 放射線治療の至適開始時期、基本方針は
CQ12 頭頸部、眼窩、傍髄膜原発腫瘍に対する放射線治療を化学療法と同時に開始する適応は
CQ13 強度変調放射線治療(IMRT)、陽子線治療の適応は
CQ14 低リスク群に対する標準的化学療法は
CQ15 中間リスク群に対する標準的化学療法は
CQ16 高リスク群に対する標準的化学療法は
CQ17 高リスク群に対する自家造血細胞移植併用大量化学療法は有効か
CQ18 再発後治療の化学療法レジメンにはどのようなものがあるか
CQ19 再発腫瘍に対する局所治療の役割は
CQ20 有効な分子標的治療は
CQ21 肝中心静脈閉塞症(VOD)の診断基準にはどのようなものがあるか
CQ22 標準治療による長期合併症や再発の経過観察はどのように行うか

8章 ユーイング肉腫ファミリー腫瘍
I アルゴリズム
II はじめに
III クリニカルクエスチョン
CQ1 ユーイング肉腫ファミリー腫瘍(ESFT)の治療方針の決定に必要な分類と検査、診断のために必要な検査は
CQ2 推奨される手術法(切除範囲)は
CQ3 限局例における外科切除縁と放射線照射線量の関係は
CQ4 限局例に対する標準的化学療法は
CQ5 限局例に対する初回化学療法後の組織学的治療効果と予後との関係は
CQ6 限局例における骨髄への微小転移による全身再発への影響は
CQ7 骨盤原発の限局例に対する適切な局所治療は
CQ8 肺転移例に対する全肺照射は有効か
CQ9 転移例に対する標準的治療は
CQ10 再発例の治療法は
CQ11 局所治療の晩期合併症は
CQ12 化学療法による晩期合併症は
CQ13 再発の経過観察の方法は

9章 その他のまれな腫瘍
I はじめに
II クリニカルクエスチョン
CQ1 以下の疾患群の治療方針の決定に必要な分類と検査は
・乳児型線維肉腫
・滑膜肉腫
・胞巣状軟部肉腫
・悪性ラブドイド腫瘍

10章 腫瘍生検・中枢ルート
I はじめに
II クリニカルクエスチョン
CQ1 腫瘍生検におけるサンプルのサイズ、質は
CQ2 腫瘍生検において注意すべき合併症は
CQ3 巨大縦隔腫瘍における安全な腫瘍生検方法は
CQ4 中枢ルート造設の方法にはどのようなものがあるか
CQ5 中枢ルート造設における合併症とその対策は
CQ6 中枢ルートの標準的管理法は
CQ7 中枢ルート挿入中の合併症とその対策は

略語一覧
薬剤名一覧
索引
 診療ガイドラインは、既に多くの領域でエビデンスベース(EBM)で作成され、それに基づき治療されるようになってきている。がん診療ガイドラインは、日本癌治療学会の指導の基で、各領域の専門学会や研究会においてエビデンスレベルを吟味しながらガイドラインが作成されてきて、小児がん領域においても、小児がん診療ガイドラインと小児白血病・リンパ腫診療ガイドラインが作成されてきており、3年おきに改訂が行われています。先般、後者の改訂が終了し、今回は小児がん診療ガイドラインの改訂版として2016年版が発行となり、新たに「その他のまれな腫瘍」と「腫瘍生検・中枢ルート」の項目が追加されています。

 ガイドライン治療は、エビデンスベース(EBM)で作成され、それに基づき治療のガイドラインが示されるものですが、小児がんにおいては希少疾患であるが故に、EBM がいまだ十分でなく、臨床試験においても第III相試験が行われた上で得られたデータも少なく、第II相試験のデータやヒストリカルコントロールを用いた試験さらに観察研究のデータなどが引用され、そのエビデンスレベルが決して高いものばかりではありません。多くのクリニカルクエスチョンに対して、それなりにいくつかのエビデンスを用いて解説し、ガイドラインが作成されていますが、決して、確固としたガイドラインにはまだ至っていない領域も少なくありません。小児がんは、わが国では1990年頃からグループスタディが行われるようになり、それなりにエビデンスも得られていますが、臨床試験のレベルやそのあり方自体にも問題が少なくなく、多くの臨床試験は欧米の試験を模倣し、その追試を行った形になっています。昨年になり、造血器腫瘍とともに日本小児がん研究グループJCCG)が結成され、それに先立って統一された日本小児血液・がん学会(JPHOG)とともに、両輪となって、日本から小児がんや造血器腫瘍のエビデンスを発信できる体制となり、今後の研究がまたれるところです。

 よって、本ガイドラインは、実際に診療に従事する医師が適切な判断のもとに診療することが可能となるように作成されていますが、エビデンスレベルなどをきちんと精査することが必要です。ガイドラインで示された治療指針はあくまで現在得られているエビデンスに基づく指針であり、個々の患者の状況や家族を含めた希望、さらに最新の情報を吟味して治療法を決定することが重要です。また、最近のゲノム医療の進歩は、新たな情報が治療指針に直結する時代となってきています。本ガイドラインが、小児がんの専門医だけでなく、小児がんに関わる医療人に対して、適切な治療選択の指針になることを願っています。

平成28年7月
日本小児血液・がん学会理事長
広島大学病院小児外科
檜山 英三