小児白血病・リンパ腫診療ガイドライン 2016年版 第3版

希少な小児がんの標準治療を示すガイドラインが5年ぶりに改訂!

編 集 日本小児血液・がん学会
定 価 3,564円
(3,300円+税)
発行日 2016/02/25
ISBN 978-4-307-17069-7

B5判・204頁・図数:13枚

在庫状況 あり

小児がんの年間発症数は約2,500人と成人に比較して非常に少ない。それゆえ前方視的ランダム化比較試験を行うことは難しく、新たなエビデンスを創出しにくい領域である。そのような背景を十分に踏まえた上で、標準的治療に対する基本的な考え方を提示し、治療選択のための情報提供ツールとして改訂版が作成された。前版のCQ形式を踏襲し、各解説の内容の充実をはかった。新たに小児緩和医療のCQが追加されたことも注目である。
ガイドラインの基本的事項

1章 急性リンパ性白血病ALL
I アルゴリズム
II はじめに
III クリニカルクエスチョン
CQ1.小児ALLの治療方針の決定に必要な分類と検査は何か
CQ2.小児ALLの標準的寛解導入療法は何か
CQ3.小児ALLの寛解後の標準的治療は何か
CQ4.小児ALLの標準的維持療法は何か
CQ5.小児ALLの標準的CNS白血病の予防および治療は何か
CQ6.小児Ph染色体陽性ALLの標準的治療は何か
CQ7.乳児ALLの標準的治療は何か
CQ8.思春期・若年成人ALLの標準的治療は何か
CQ9.再発小児ALLの標準的治療は何か
CQ10.小児ALL治療における造血細胞移植の役割は何か
CQ11.小児ALL治療におけるMRD測定の役割は何か

2章 急性骨髄性白血病 AML
I アルゴリズム
II はじめに
III クリニカルクエスチョン
CQ1.小児AMLの治療方針の決定に必要な分類と検査は何か
CQ2.小児AMLの標準的寛解導入療法は何か
CQ3.小児AMLの寛解後の標準的治療は何か
CQ4.小児AML治療における造血細胞移植の役割は何か
CQ5.再発小児AMLの標準的治療は何か
CQ6.小児APLの標準的治療は何か
CQ7.Down症候群のAMLの標準的治療は何か

3章 慢性骨髄性白血病 CML
I はじめに
II クリニカルクエスチョン
CQ1.小児CMLの標準的治療は何7
CQ2.小児CML治療における造血細胞移植の役割は何か

4章 骨髄異形成症候群 MDS
I アルゴリズム
II はじめに
III クリニカルクエスチョン
CQ1.芽球増加を伴わない小児MDSの標準的治療は何か
CQ2.小児のRAEBおよびRAEBTの標準的治療は何か
CQ3.JMMLの標準的治療は何か
CQ4.Down症候群の小児にみられるMDSの標準的治療は何か
CQ5.Down.症候群にみられるTAMの管理は何か

5章 リンパ腫
I アルゴリズム
II はじめに
III クリニカルクエスチョン
CQ1.小児リンパ腫の治療方針の決定に必要な検査と分類は何か
CQ2.小児の成熟B細胞性リンパ腫の標準的治療は何か
CQ3.小児のリンパ芽球性リンパ腫の標準的治療は何か
CQ4.小児の未分化大細胞型リンパ腫の標準的治療は何か
CQ5.小児ホジキンリンパ腫の標準的治療は何か
CQ6.思春期・若年成人のリンパ腫の標準的治療は何か
CQ7.小児リンパ腫治療におけるFDG-PET/CT検査の意義は何か
CQ8.再発・難治性非ホジキンリンパ腫の標準的治療は何か

6章 ランゲルハンス細胞組織球症 LCH
I はじめに
II クリニカルクエスチョン
CQ1.小児LCHの治療方針の決定に必要な検査と分類は何か
CQ2.単一臓器型LCHの標準的治療は何か
CQ3.多臓器型LCHの標準的治療は何か

7章 支持療法
I アルゴリズム
II はじめに
III クリニカルクエスチョン
CQ1.標準的な感染予防は何か
CQ2.発熱性好中球減少症の標準的治療は何か
CQ3.深在性真菌症の診断法は何か
CQ4.深在性真菌症の標準的治療は何か
CQ5.ウイルス感染症の標準的治療は何か
CQ6.赤血球輸血の適応と輸血量の目安は何か
CQ7.血小板輸血の適応と輸血量の目安は何か
CQ8.L-アスパラギナーゼ投与時の凝固線溶系異常に対する標準的治療は何か
CQ9.腫瘍崩壊症候群の標準的治療は何か
CQ10.小児がん治療における苦痛緩和対策は何か
CQ11.小児がん患児が経験する疼痛に対する標準的評価は何か
CQ12.検査・処置に対する標準的疼痛管理は何か
CQ13.小児がん(疾患)に対する標準的疼痛管理は何か

略語一覧
薬剤名一覧
索引
わが国の医療現場に「根拠に基づいた医療(evidence-based medicine:EBM)」が導入されて既に久しい。EBMでは、目の前の患者の問題をできる限り定式化し、それを解決する医学情報を検索して十分吟味した上で患者に適用されます。その際には、臨床状況や患者の意向などあらゆる角度から検討し、最良の選択肢を患者と相談して決定することが大切です。ここで言う医学情報は、主に臨床研究に基づくエビデンスですが、そのレベルはさまざまであり、それらを批判的に吟味するには膨大な労力を要します。診療ガイドラインは、最新の医学情報を専門家集団が十分吟味し分かりやすくまとめた指針であり、医療現場において適切な診断と治療の助けとなります。近年、診療ガイドラインが各領域で整備され、今やガイドラインのない医療分野はないといっても過言でありません。
 がん診療ガイドラインは、日本癌治療学会が中心となり、各専門学会や研究会において国内外で行われた臨床試験、臨床研究で得られた科学的根拠に基づき各作成委員会で検討しコンセンサスを得て作成されています。日本小児血液・がん学会では、小児がん領域と小児白血病領域の診療ガイドラインを担当しており、「小児白血病・リンパ腫診療ガイドライン2016年版」は、前身の日本小児血液学会時代に出版した初版(2007年)、第2版(2011年)に続く第3版です。今回新たに、疾患としてランゲルハンス細胞組織球症、および、支持療法としてがん疼痛の管理が加わりました。支持療法は、小児血液腫瘍のみならず、小児固形腫瘍の診療に共通するものであり、今後独立した冊子を目指すことになると思われます。
 本ガイドラインで採用されているエビデンスは、国内臨床研究に基づく根拠も多く含まれており、わが国の医療事情を一定反映しているものと思われます。小児白血病領域では、40年を超える多施設共同臨床研究の歴史がありますが、2003年に全国の研究グループが統一されて日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)が設立され、名実ともに質の高い臨床試験が可能になりました。また、昨年には小児固形腫瘍研究グループと合体して日本小児がん研究グループ(JCCG)としてより大きく成長しており、世界にエビデンスを発信する原動力として期待されます。
 本ガイドラインは、実際に診療に担当する医師が特定の臨床状況において適切な判断を下せるように体系的に作成されていますが、ガイドラインで示された治療方法がすべての患者に適するとは限らないため、個々の患者の臨床状況や希望を勘案した上で治療方針を決定することが大切です。とはいえ、本ガイドラインが血液腫瘍を専門とする医師のみならず、すべての医療スタッフと患者・家族の情報共有の架け橋となり、小児血液腫瘍患者の適切な治療選択に役立つことを切に願っています。

平成28年2月
日本小児血液・がん学会前理事長              
独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター臨床研究センター
堀部 敬三