頭頸部がん薬物療法ガイダンス

頭頸部がん領域でも近年その比重を増す薬物療法を詳細に解説。

編 集 日本臨床腫瘍学会
定 価 2,160円
(2,000円+税)
発行日 2015/07/10
ISBN 978-4-307-10173-8

B5判・96頁・図数:5枚

在庫状況 あり

頭頸部がんの治療は手術や放射線療法が中心であったが、薬物療法の進歩にともない、薬物療法の役割が急速に拡大している。こうした中、『頭頸部癌診療ガイドライン』(日本頭頸部癌学会編)を補完する薬物療法に特化した診療指針の刊行が期待されていた。本書はそのような声に応え、薬剤の選択やレジメンを詳述するとともに、支持療法、経過観察、機能障害への対処なども幅広く採り上げ、チーム医療の実践にも役立つ内容とした。
はじめに
1 頭頸部がん薬物療法ガイダンスの目的と対象
2 本ガイダンス作成の過程

I 総論
A 頭頸部がん治療の実際
 1 頭頸部がん
 2 頭頸部がん治療における集学的治療の重要性
 3 頭頸部がんのチーム医療における各職種の役割
  a 頭頸部外科医
  b 放射線腫瘍医
  c 腫瘍内科医
  d 放射線診断・IVR医
  e 病理医
  f 形成外科医
  g 緩和ケア医
  h 精神科医(精神腫瘍医)
  i 皮膚科医
  j 歯科医・歯科衛生士
  k 薬剤師
  l 看護師
  m 栄養士
  n 理学療法士・言語聴覚士
  o 医療ソーシャルワーカー

B 頭頸部がん治療における薬物療法の考え方と管理
 1 頭頸部がん治療における薬物療法の意義と目的
 2 頭頸部がんに用いられる薬物療法
 3 頭頸部がんで行われる薬物療法の管理

C 頭頸部がん薬物療法開始時のチェック項目
 1 全身状態・腫瘍関連症状
 2 心機能
 3 呼吸状態・肺
 4 腎機能
 5 肝機能
 6 骨髄機能
 7 歯科診察
 8 過敏症など
 9 耐糖能
 10 その他

D 局所進行頭頸部がんで行われる薬物療法
 1 化学放射線療法(分子標的薬を含む)
  a 化学放射線療法(chemoradiation; CRT)の原理
  b 化学放射線療法の意義・目的・適応・方法
  c 切除可能例における喉頭温存希望患者に対する化学放射線療法
  d 切除不能例に対する化学放射線療法
  e Cmab-RTの意義・目的・適応・注意点
  f 化学放射線療法やCmab-RTにおける支持療法の意義
 2 導入化学療法
  a 切除可能例における導入化学療法の意義・目的・適応
  b 導入化学療法後の治療選択
  c 切除不能局所進行例における導入化学療法の意義・目的・適応
  d 導入化学療法時の支持療法
 3 術後治療
  a 術後再発高リスク患者に対する術後化学放射線療法
  b 術後化学療法、放射線治療後化学療法の意義

E 再発・転移頭頸部がんに対する薬物療法
 1 再発・転移頭頸部がんに対する標準的な初回薬物療法と、その意義・目的・適応
 2 再発・転移頭頸部扁平上皮癌に関する初回薬物療法
 3 二次治療以降の薬物療法

F 頭頸部がん治療における支持療法
 1 治療中に推奨される栄養補給路
 2 頭頸部がん薬物療法における栄養管理
 3 粘膜障害の管理
  a 頭頸部がんに対するCRTに伴う口腔粘膜炎
  b 歯科受診
  c 口腔ケア
  d 疼痛治療
  e 感染を併発した場合の治療
 4 放射線皮膚炎
 5 Cmabに対する支持療法
  a Infusion reaction(IR)
  b 皮膚毒性
  c 薬剤性間質性肺炎
  d 低マグネシウム血症

G 頭頸部がん初回治療後の経過観察
 1 診察、内視鏡検査
 2 画像検査
 3 血液検査、腫瘍マーカー

H 頭頸部がんにおける機能障害とその対処
 1 放射線治療後の嚥下障害
 2 嚥下リハビリテーションの効果
  a 臨床的評価
  b 生理学的評価

参考文献

II 部位別・治療法に関するCQ
A 部位別CQ
 1 上咽頭
  CQ1 上咽頭癌は早期であっても化学放射線療法が推奨されるか?
  CQ2 上咽頭癌の化学放射線療法後に追加化学療法を行うことは推奨されるか?
  CQ3 上咽頭癌はCmab-RTの適応になるか?
  CQ4 上咽頭癌において導入化学療法を含んだ治療戦略は推奨されるか?
 2 上顎洞
  CQ5 進行上顎洞扁平上皮癌に対する動注化学放射線療法は推奨されるか?
 3 舌・口腔
  CQ6 舌・口腔癌に対して術前化学療法、術前化学放射線療法は推奨されるか?
 4 中咽頭
  CQ7 HPV感染の検査は必要か?(検査の必要性と妥当な検査法)
  CQ8 HPV感染の有無でCmab-RTの適応を判断すべきか?
 5 喉頭・下咽頭
  CQ9 喉頭全摘が必要な喉頭癌・下咽頭癌に対し、導入化学療法は推奨されるか?
 6 原発不明がん頸部リンパ節転移
  CQ10 原発不明がん頸部リンパ節転移のみに対しての初回治療に手術療法を選択すべきか化学放射線療法を選択すべきか?
  CQ11 原発不明がん頸部リンパ節転移術後、高リスク(断端陽性もしくはリンパ節転移被膜外浸潤)であった場合、化学放射線療法は有用か?
  CQ12 原発不明がん頸部リンパ節転移で病理診断が扁平上皮癌の場合に、化学放射線療法で併用する抗がん薬は何がよいか?
 7 唾液腺
  CQ13 再発・転移唾液腺癌に薬物療法は有効か?

B 治療法CQ
 化学放射線療法
  CQ14 遠隔転移を有する場合に化学放射線療法は適応となるか?
  CQ15 切除不能な頭頸部がん局所再発に対する化学放射線療法は推奨されるか?
  CQ16 頭頸部がん局所再発に対する救済手術後の術後化学放射線療法は推奨されるか?
■発刊にあたり■

 頭頸部がんは口唇・口腔、鼻腔・副鼻腔、上咽頭、中咽頭、下咽頭、喉頭、大唾液腺、甲状腺、頸部食道に発生したがんの総称で、扁平上皮癌、腺癌、リンパ腫、悪性黒色腫、肉腫など多彩ながんが含まれます。このような多岐にわたる頭頸部がんの治療にかかわるのは頭頸部外科医に加え、腫瘍内科医、放射線治療医、形成外科医、放射線診断・IVR医、緩和ケア医、精神腫瘍医、皮膚科医などの医師・歯科医師や看護師、薬剤師、栄養士、言語聴覚士、理学療法士、医療ソーシャルワーカーなどのメディカルスタッフであり、多職種によるチーム医療が特に必要ながん腫です。
 頭頸部がんの治療ではがん腫に加えて発生部位毎の特殊性も考慮する必要がありますが、手術、放射線を中心とした従来の治療から薬物療法の進歩にともない薬物療法の比重が急速に増しています。国内では日本頭頸部癌学会より『頭頸部癌診療ガイドライン』が刊行されていますが、薬物療法の記述は必ずしも十分ではありませんでした。
 このようななか、頭頸部がん治療にかかわるすべての診療科の医師やメディカルスタッフが薬物療法に対する共通の理解のもとに治療にあたることが必要と考えられ、日本頭頸部癌学会の協力のもと日本臨床腫瘍学会で本ガイダンスを作成することとなりました。本ガイダンスは自治医科大学の藤井博文教授を部会長として多くの委員・協力委員・評価委員のご尽力により作成されました。このような素晴らしいガイダンスを作成された各委員に敬意を表したいと思います。
 本ガイダンスは『頭頸部がん薬物療法ガイダンス』という名称ではありますがチーム医療に配慮した内容で、発生部位による特殊性にも対応できるようになっています。本ガイダンスがチーム医療としての頭頸部がん治療の質向上をもたらし、頭頸部がん患者さんの生存率およびQOLの向上に寄与するものと大いに期待しています。
 2015 年7月
公益社団法人日本臨床腫瘍学会
理事長 大江裕一郎


■発刊によせて■

 根拠に基づく医療(Evidence-based medicine:EBM)が浸透し、進歩し続ける医療技術を適正に利用することの必要性からガイドラインが生まれ、近年、厚生労働省の後押しのなか、わが国の各種学会や研究会、団体において、さまざまな疾患や病態のガイドラインが作成されるようになった。結果、今やまさに百花繚乱の如く多数のガイドラインが刊行される状況になっている。しかし、これだけ多くのガイドラインが世に出てきていても、日進月歩の医療が高度に専門分化している臨床現場では、錯綜する医療情報とともに、相も変わらず混乱と誤解が渦巻いており、適正な医療がすべての医療機関で実現できているとは言い難い。実直な多くの医療者は、実践的で確かな臨床上の指針を常に求めている。
 大江理事長の「発刊にあたり」のなかでも述べられているように、日本頭頸部癌学会からすでに『頭頸部癌診療ガイドライン』が刊行されている状況であったが、その中で薬物療法の記述は必ずしも十分ではなかった。それに加えて、近年、進歩が著しく、治療体系も複雑化し、臨床現場で適正な診療を行うことが難しくなってきている頭頸部がん薬物療法に関して、― 先のガイドラインを補う指針が必要ではないか ― という日本臨床腫瘍学会会員の多くの声が寄せられた。そこで、『頭頸部癌診療ガイドライン』を補完するものとして、本書が企画された。このように、特殊な背景のなかで薬物療法に特化した"診療指針"が作成されたのである。本ガイダンスの企画、検討、作成にあたっては、藤井博文ガイダンス作成部会長を中心に、日本臨床腫瘍学会のがん薬物療法専門医、日本頭頸部癌学会とそのガイドライン委員会メンバーである外科医、放射線腫瘍医など、現場で実際に頭頸部がん診療を担っている作成部会メンバーに加えて、日本臨床腫瘍学会事務局など多くの方々の無償のご尽力をいただいた。さらに本ガイダンスの出版にあたり、金原出版の編集の方々にも大変お世話になった。この場を借りてすべての関係者に深く御礼申し上げる。
 本ガイダンスが、臨床腫瘍医のみならず、さまざまな分野・領域のメディカルスタッフの診療にお役に立てることができればこれ以上の喜びはない。ガイドライン/ガイダンスが"生きた指針"であり続けるためには、多くの人が実際利用して厳しく評価をいただくこと、客観的な有用性を検証すること、日進月歩の医療に即していくこと、そしてこれらをもとに適切に改訂していくことがもっとも重要であると認識している。
 2015年7月
公益社団法人日本臨床腫瘍学会
ガイドライン委員長 室  圭