大腸がん標準化学療法の実際 改訂第2版増補 分子標的薬の臨床導入

大腸がんの化学療法をより安全により効果的に実施するためのガイドブック!!

編 集 島田 安博
定 価 2,640円
(2,400円+税)
発行日 2009/05/25
ISBN 978-4-307-10145-5

B5判・116頁・図数:59枚・カラー図数:54枚

在庫状況 なし

大腸がんに対する抗がん剤治療は5-FU/ℓ-LV、Irinotecan、Oxaliplatinの臨床導入により目を見張る進歩があります。「大腸がん標準化学療法の実際」の初版は2006年1月に発刊され、既に3年近く経ちます。この間にBevacizumabやCetuximabという分子標的治療薬が国内承認され、標準治療に加わることになりました。臨床現場では、FOLFOXやFOLFIRI療法の安全で効率的な導入が行われ、さらに外来治療センターの普及により多くの大腸がん化学療法が外来で実施されるようになりました。各種治療ガイドラインや普及活動なども標準治療の浸透に大きな貢献をしたことは間違いありません。
初版では、経験の乏しい化学療法に関連する情報を全面的に開示・共有し、海外での標準治療を効率的に国内導入することを目指しました。薬剤調製、中心静脈ポート造設や患者教育などの臨床現場に即したチーム医療をテーマとすることにより多くの医療関係者に高い評価をいただくことができました。
今回の改訂版では、応用編と位置づけ、FOLFOX/FOLFIRI療法での経験を基に新たな問題点や改良点について記しました。新たに登場した分子標的薬についてはどのように臨床導入するかを、FOLFOX/FOLFIRI療法の基本治療をベースに臨床現場の視点で編集しました。治療適応、具体的な投与手順、有害事象対策などについて、国立がんセンター中央病院の消化器内科、IVR部門、看護部、薬剤部で実際に業務担当している医療者が担当しました。海外臨床試験のエビデンスは他の書籍に譲り、ベッドサイドで常に参照しながら実地診療に役立てることができることを目指した点は初版と同じ方針です。
FOLFOXやFOLFIRI療法、そして新規分子標的薬が、臨床現場に与えたインパクトは単に治療成績の向上だけではないと思います。海外と同様の治療を提供し、目の前の患者さんに最大の治療効果を提供したいという医療者に対して、チーム医療がいかに重要であるか、各業種間の情報交換、患者や家族への教育など、がん治療の本質を医療者に再認識させた点が大きいと思います。
本改訂版が、初版の読者も含め多くの臨床現場の皆様の参考書のひとつになることができれば、執筆者一同の望外の喜びです。


改訂第2版増補について
第6章FOLFOX、FOLFIRIの保険請求の実際ならびにベバシズマブの診療報酬上の取り扱いにつき改訂しました。

(「改訂第2版 序」より)
推薦のことば
改訂第2版 序
第1版 序

1 切除不能・転移性進行大腸がんに対する標準的化学療法のエビデンス −分子標的薬の臨床導入−
 1. 転移性大腸がんに対する抗がん剤治療のエビデンス
 2. 国際的標準治療を臨床現場に導入するために
 Q&A

2 中心静脈カテーテル挿入・ポート造設の実際、管理、合併症とその対策
 1. 挿入手技のコツ
  中心静脈ポート造設の手順
   1) 穿刺部位および埋め込み位置の決定
   2) 穿刺部、皮下トンネル、皮下ポケット周囲の消毒と局所麻酔
   3) 鎖骨下静脈の穿刺
   4) カテーテルの挿入
   5) 皮下ポケットの作成
   6) ポートとカテーテルの接続
   7) 試験注入と皮膚縫合
 2. 合併症とその対策
  a. カテーテルピンチオフ(ピンチオフ現象)
  b. フィブリンシース
  c. 血栓性静脈炎、静脈血栓症
  d. カテーテル損傷、器具の破損
  e. 皮膚障害
  f. 感染
  g. まとめ
 
3 FOLFOX,FOLFIRI+ベバシズマブの患者教育と看護
 1. クリニカルパス作成のポイント
  a. 医療者用クリニカルパス
  b. 患者用パス
  c. エビデンスの検討
  d. 外来との連携
  e. 実際の使用と改訂
 2. 病棟での初期導入のオリエンテーションの実際
  a. 入院からポート挿入
   1) 本人の理解・同意の確認
   2) ポート挿入についてのオリエンテーション
  b. 治療開始から退院
   1) 化学療法オリエンテーション
   2) インフューザーポンプの管理
   3) 抜針指導
  c. ベバシズマブ投与患者に関して
 3. 外来通院治療センターでの継続治療と患者指導
  a. 通院治療センターの概要
  b. 通院治療の一日の流れ(国立がんセンター中央病院の場合)
  c. 患者指導の実際と病棟との連携
  d. 外来看護において注意すべきこと
   1) 副作用とその症状・対応について
   2) インフューザーポンプの管理
  e. 緊急時の対処方法
  f. 外来治療の今後の課題について
 Q&A

4 FOLFOX、FOLFIRI+ベバシズマブの薬剤調製
 1. 薬剤調製の実際-効率的な調剤のコツ
  a. 調剤に必要な薬剤と器具
  b. ポンプ調製の基本手順
   1) ポンプ調整時のポイント
   2) その他の工夫
  c. おわりに
 2. パンフレットによる薬剤管理指導
  a. 大腸がん化学療法における薬剤管理指導の位置づけ(パンフレットを用いることの意義を含めて)
   1) 繰り返し説明をすることの重要性
   2) パンフレットを用いた説明
   3) ベバシズマブの導入にあたって
  b. 薬剤管理指導内容のコンセプト
   1) 投与スケジュール
   2) 薬剤の説明
   3) 副作用
   4) ベバシズマブの導入にあたって
  c. 薬剤管理指導の実際
   1) 説明の時期(効率的な方法の選択)
   2) 患者さんの状態把握(副作用の評価)と情報フィードバック
   3) ベバシズマブ導入による留意点
  d. まとめ
 Q&A
 
5 FOLFOX、FOLFIRI+分子標的薬の有害事象と投与継続のコツ
 1. FOLFOX、FOLFIRIの有害事象とその対策
  a. FOLFOX
   1) 末梢神経毒性
   2) 血液毒性
   3) 消化器毒性
   4) 皮膚症状
   5) アナフィラキシー、その他
  b. FOLFIRI
   1) 有害事象
   2) 対策
  c. まとめ
 2. 減量と延期
  a. FOLFOX 〜注意すべき有害事象と減量のポイント
   1) 急性神経障害
   2) 慢性神経障害
   3) 好中球減少と血小板減少
   4) アレルギー反応
  b. FOLFIRI 〜注意すべき有害事象と減量のポイント
   1) 食欲不振、悪心、嘔吐
   2) 好中球減少
  d. まとめ
 3. 治療効果と蓄積毒性の評価 継続判断のコツ
  a. FOLFOX
  b. FOLFIRI
  c. まとめ
 4. ベバシズマブ併用時の観察項目と対応法
  a. ベバシズマブを併用した際の化学療法に関連する毒性
  b. ベバシズマブによる毒性
   1) 高血圧
   2) 蛋白尿
   3) 出血(粘膜出血および腫瘍出血)
   4) 血栓塞栓症(静脈および動脈性)
   5) 創傷治癒遅延および創傷合併症
   6) 消化管穿孔
   7) 可逆性後部白質脳症症候群(RPLS:reversible posterior leukoencephalopathy syndrome)
 5. 治療抵抗例への対応
 6. セツキシマブによる皮膚病変と症状コントロール
  a. 分子標的薬、特にEGFR系阻害薬の時代を向かえて
  b. EGFR系阻害薬によって起こる皮膚障害に対する考え方
  c. 皮膚障害の種類について
  d. 代表的な皮膚障害と症状マネジメント
  e. 原疾患である大腸がんの治療を成功させるために
 Q&A

6 FOLFOX、FOLFIRIの保険請求の実際
 1. カテーテル・ポート設置に関連する保険請求
 2. 外来化学療法に関連する保険請求
 Q&A

索引