1枚の画像から鑑別診断へ とっておきの100例

画像所見から鑑別診断検討までの考え方を解説する症例・画像集!

編 集 松永 尚文
定 価 8,800円
(8,000円+税)
発行日 2018/04/20
ISBN 978-4-307-07108-6

B5判・370頁・図数:305枚・カラー図数:8枚

在庫状況 あり

限られた画像所見から鑑別診断を行うには、患者の主訴や既往、現症を考慮した論理展開が必要です。本書は鑑別診断まで至る画像診断医の考え方を症例ベースで解説しています。頭頚部から胸腹部、骨軟部まで、教訓的・学術的な症例を100例収載しています。参考文献を挙げつつ治療法についても触れており、症例画像を学習しようという読者だけでなく、内科や外科、総合診療など、画像検査を行う全ての医師が参考になる内容です。
1 脳神経
001 自室内で意識障害で発見され、救急受診後無治療で改善した
002 10年前の交通事故で頸椎捻挫し、数年前から慢性頭痛、起立時の頭痛増悪を自覚するようになった

2 頭頸部
014 半年前に前頸部の腫瘤を自覚し、CT で甲状腺腫瘍と診断された
015 生後2カ月頃から繰り返す呼気性喘鳴、犬吠様咳嗽を呈した5カ月、女児

3 心・大血管・血管
026 他院で右冠動脈左室瘻が指摘されており、辺縁に円弧状の石灰化を有する巨大な腫瘤性病変がみられた
027 胸部不快感で右心不全と診断され、心カテーテル検査で右心系の酸素飽和度が上昇していた

4 気管支・肺・縦隔
033 咳嗽、時々血痰がみられ、右上肺野の陰影は軽度縮小するも、その後増大してきた
034 発熱、全身倦怠感、咳嗽、呼吸困難感で発症し、両側肺炎と診断された若年男性

5 食道・胃
052 慢性B型肝炎で経過観察中、職場検診によって両側下肺野内側で心陰影に重なってなだらかな立ち上がりを呈する腫瘤影が認められた
053 腹膜透析中に消化管穿孔をきたした

6 十二指腸・小腸・大腸
056 発熱、腹部膨満があり、腹部単純X線で腸閉塞が疑われた新生児
057 10年前より左鼠径ヘルニアの既往があり、突然左側腹部痛で救急受診された

7 肝・胆・膵・脾
060 咽頭痛があり、好酸球増多を指摘された
061 右季肋部痛で救急受診、血液検査で炎症反応と肝機能の著明な増悪が認められた

8 泌尿器・後腹膜
067 成人検診の超音波検査で左腎洞内腫瘤を指摘された
068 400m走に出場した日の夜、嘔吐と激しい両側背部痛が出現した

9 産科・婦人科
074 妊娠後期に左腋窩に腫瘤を自覚、徐々に増大し、8cm大の腫瘤が触知された
075 腹部膨満感が出現し、CTで骨盤内腫瘤、大量腹水、両側胸水が指摘された

10 骨・軟部
085 下肢脱力から歩行困難となり、下部胸椎に膨隆性・溶骨性変化が見られた
086 右拇指腫脹に気づき、徐々に右拇指痛が出現し、右拇指腫瘤を指摘された

※誌面の都合上、各章一部のみ掲載した
 画像診断関連学会では国内外を問わず、毎年恒例のimage interpretation session(いわゆる症例検討会)はメインイベントの1つであり、メイン会場が満席の盛況ぶりである。いつも熱気に溢れており、その領域のエキスパートによる診断のプロセスを学べる絶好のチャンスとなっている。case of the month やinteresting case 等ショートコラムが掲載されている英文誌や邦文誌もある。
 金原出版月刊誌・臨床放射線の「今月の症例」の連載は、昭和41年から現在に至るまで脈々と続いている。common and uncommon diseaseの典型例や非典型例、教訓を含んだ例、示唆に富む例、提示画像や病歴からは想像できないような意外な展開を示す例など、明日からの日常診療に役立つことも少なくない。鑑別診断の絞り込みは、所見の取り方やどの項目を重要視するかによって、大きく変わってくる。「今月の症例」では、最初のページの提示画像と病歴をみて、自分なりに考えて、次ページからは、解答の糸口となる画像、所見や解説、鑑別診断への道筋が示され、最終診断名に辿りつく構成になっている。短編小説のような感覚で、物語が小気味よく展開していく。さっと目を通してコンパクトな知識を得るのもよいであろうし、または日常診療の現場で遭遇する状況を想定して、次に行われた画像検査や解説へと読み進みたい誘惑をぐっと我慢して自分なりに思いを巡らせるのもよいかもしれない。
 「今月の症例」は1971年(昭和46年)16巻6号から始まっており、日常診療に役立つ貴重な症例も多く、いずれも全国各施設から投稿されたその折々の「旬の症例」とも言える。確かに見たことがあるが、どの号に載っていたか思い出せないことも少なくない。かといって10年間分の雑誌をめくって探し出すのも容易ではない。そのため、多数例を1冊にまとめた書籍化への要望も多かった。これまでに多田信平先生と大場覚先生の編集により1987年までの14年間分を1冊の本にまとめて「1枚のX線写真から─鑑別診断の進め方と考え方─」と題して1988年に、その後大場覚先生の編集により1988年から2004年までの17年間の中から100症例選んで「1枚の画像から厳選100例」と題して2005年に刊行されている。
 この度、第3冊目として、2005年から2016年までに掲載された「今月の症例」から100例を厳選し、「1枚の画像から鑑別診断へ─とっておきの100例─」と題して、企画させていただいた。疾患の範囲は、(1)脳神経、(2)頭頸部、(3)胸部、(4)心・大血管・血管、(5)食道・胃、(6)十二指腸・小腸・大腸、(7)肝・胆・膵・脾、(8)泌尿器・後腹膜、(9)産科・婦人科、(10)骨・軟部まで、小児も含めて全領域が網羅され、オールラウンドな知識が得られるようになっている。単純X線写真がめっきり減って、今や画像診断の中心であるUS・CT・MRI・RIが多くなっているのも時代の流れであろう。当初は表裏の2頁だったが、最近は豊富なマルチモダリティの画像と熱心な執筆により次第に多数頁になってきている。10年分の100例を収載すると相当なボリュームとなるが、100例とも症例単位の読み切りなので、必要に応じてどの頁からでも読み始めることができるであろう。長きにわたり寄稿していただいた執筆者に厚く御礼を申し上げる次第である。本書が日常診療の一助となれば、執筆者一同の喜びである。

平成30年3月
松永 尚文