第2章 背景知識と推奨・解説
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クラスⅢは,完全密閉式になっており,内部は陰圧に保たれ,キャビネット前面に取
り付けられた手袋を用いて調製を行うグローブボックス式になっている。毒性の高い,
または感染性物質の使用のために設計されている
2)3)
(
図6
)
6)
。クラスⅢは,隔離された
環境で,特殊な搬入システムを使用して無菌状態を保てばアイソレーター同様の機能に
なる
3)
。
アイソレーターは,作業の準備から廃棄までの全プロセスを周囲の環境から隔離され
た無菌環境で行える装置である。アイソレーターは密封されているか,もしくは微生物
を補集できるフィルターシステム(最低でもHEPA)を通して空気が供給されており,
再現可能な方法で汚染物質を除去できる
3)
。揮発性薬物を調製する場合には,アイソ
レーターからの排気を適切に建物外に換気できるような設計にする
3)
。クラスⅡの安全
キャビネットと異なり,HDの調製で使用するアイソレーターには統一された設計もし
くは性能基準はない
4)
。
いずれのタイプを選択した場合も,適切な設置と保守点検を行い,その性能が保証で
きるようにする。
3.環境
HDの空気中の濃度を上昇させないよう十分に換気されたエリアで洗浄および無毒化
作業を行う
1)
。安全キャビネット,アイソレーターの洗浄,消毒はトレーニングを受け
た作業者の職責であり,文書化された手順に従って行う。安全キャビネット内の汚染レ
ベルを低減するために,一定時間経過後,1日の作業終了時に洗浄を行う。安全キャビ
ネット等の清掃は,HDの洗浄と無毒化が必要である。水洗いを基本とするが,汚染し
た薬剤の種類によって2%次亜塩素酸ナトリウムおよび1%チオ硫酸ナトリウムを使用
することも考慮する
7)
。これらの薬剤の使用が困難な場合であっても,アルコールによ
る清掃は避け,水拭きを繰り返し行う。1日の作業を始める前に無菌性確保を目的にア
ルコールによる拭き取りを行う
7)
。
定期的なメンテナンスその他の理由で,安全キャビネットのスイッチを切った場合に
HEPAフィル
ターで浄化後
室外排気
搬入口
室内吸気口と
HEPAフィルター
HEPAフィル
ターで浄化後
室外排気
強化ガラス等
によるフロン
トパネル
密閉式
手袋ポート
図6 安全キャビネットクラスⅢの構造および特徴の例
(BMBL,2009より作成)