第2章 背景知識と推奨・解説
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推奨される環境・物品等
1)生物学的安全キャビネット/アイソレーター
1.前提
HDの混合,調製,液体の注入は,HDが作業域を汚染しないように設計された生物
学的安全キャビネット(biologicalsafetycabinet,以下安全キャビネット)もしくは,無
菌調製用密封アイソレーターで行う
1)〜4)
。すべてのHDの調製は,他の業務から隔てら
れた専用の区域で行うことが推奨されており,その管理区域は,他のスタッフが立ち入
らないよう警告を明確に表示する必要がある。また,HDの準備エリアおよびその管理
区域では飲食,喫煙などを禁止する
5)
。
2.装置
安全キャビネットは,調製者の職業性曝露を防ぎ,調製環境の汚染を防止するように
デザインされた装置である。
一方,クリーンベンチは,装置外からの異物の混入を防ぐために内部を陽圧にして,
無菌環境を提供する。このユニットは調製者に風流が向かって出ていくため,薬剤の無
菌性は保たれるが,調製者や他のスタッフへ曝露を増大させる。このため,クリーンベ
ンチはHDの調製に使用してはならない
3)5)
。
図4
にクリーンベンチと安全キャビネット
の違いを示す。
安全キャビネットは,大きくⅠ,Ⅱ,Ⅲの3つのクラスに分類されている(
表8
)。さ
らに,安全キャビネットクラスⅡは4つのタイプに分類される(A1,A2,B1,B2)
(
表9
,
図5
)。HDの調製には,クラスⅡの安全キャビネットのうち,タイプB2を用いること
が最も推奨される。クラスⅡタイプB2は,キャビネット内の空気が,100%屋外に放出
され内部の高い清浄機能を維持できる。
クラスⅡタイプB1,クラスⅡタイプA2も許容されるが,一部空気の循環があるため,
HEPAフィルター
清浄空間
HEPAフィルター
排気
清浄空間
Supply Air
(給気流)
Intake Air
(吸気流)
ファン
ファン
クリーンベンチ
安全キャビネット
エアーバリア
図4 クリーンベンチと安全キャビネットの構造的相違
(日本病院薬剤師会.抗がん薬調製マニュアル 第3版,じほう,2014より作成)