第2章 背景知識と推奨・解説 

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2)閉鎖式薬物移送システム(CSTD)

1.前提

閉鎖式薬物移送システム(closed‌system‌drug‌transfer‌device:CSTD)の使用は,発

生源でHDを封じ込め,ヒトおよび環境への汚染を防止するために有効である‌

3)

CSTDとは,薬剤を調製・投与する際に,外部の汚染物質がシステム内に混入すること
を防ぐと同時に,液状あるいは気化/エアロゾル化したHDが外に漏れ出すことを防ぐ
構造を有する器具である‌

1)3)

。CSTDはHDの調製において安全キャビネットの代用には

ならないが,安全キャビネット内で使用することによりHDの汚染を軽減できる‌

1)2)

投与時に輸液セットを取り付け,ラインにプライミングする際にも,HDの漏れが起

こる可能性について示されており‌

4)

,HDの職業性曝露を防ぐためにHDの調製および

投与にはCSTDを使用することが推奨される‌

1)〜4)

2.器具

調製時に使用する器具は,大きく分けてフィルター式と機械式の2種類がある(

図7

)。

フィルター式は,密度0.22μmのフィルターやHEPAフィルターで,完全にHDを捕集
することはできない。活性炭フィルターは一時的に蒸気を吸収できる。しかし,いずれ
飽和状態になり,再放出される可能性があり,最大負荷,作業条件,最短および最長保
持時間についての試験を行う必要がある。ISOPPではフィルター式をCSTDとは認定
していない‌

3)

。CSTDの定義について

表10

に示す。

機械式

フィルター式

HD

HD

圧はフィルターを通して外へ

圧はバルーンの中へ

圧をかける

圧をかける

接続器具

接続器具

図7 調製時に使用する接続器具(例)

表10 CSTDの定義

ISOPP

NIOSH

薬剤を移し替える器具であり,外部の汚染物質を
システム内に混入させないと同時に,危険性薬物
がシステム外に漏れ出すこと,あるいは濃縮蒸気
が漏れ出すことを機械的に防ぐ器具である。

環境中の汚染を別の系に移すことを機械的に抑
え,危険性医薬品や揮発性の汚染を系の外に逃が
さないもの。