88 Ⅷ 骨腫瘍の病理

ばみられるとの記載もあるが,粘液性変化が目立つ時は軟骨肉腫の可能性を念頭に置
く必要がある。

組織像では細胞密度に乏しく,細胞の多形性や大型核に欠け,二核細胞はもしあっ

たとしても極めて稀で,核分裂像は認められない。骨内多発性にみえることがあって
も骨髄内への浸潤はなく,基質の粘液変性もみられない。手足の小さな骨にできる内
軟骨腫は組織像に幅があり,ときとして細胞密度が高く,二核細胞や粘液変性もしば
しばみられ,組織所見のみからは低悪性軟骨肉腫状を呈することがしばしばである。

手足の骨の単発病変の二次的悪性化は極めて稀である。Ollier病やMaffucci症候群

を含む多発性病変の場合は報告によっては30%にも達する悪性化が指摘されている
が,両病変共に本来組織学的にatypicalにみえる場合が多いので,どの時点で悪性
化したかの判定には,画像所見による慎重な経過観察が必要となる。

軟骨肉腫との鑑別が最も重要で,成人の大きな骨で痛みを伴う軟骨性腫瘍は悪性の

可能性を疑ってみるべきであろう。組織学的には基質の粘液性変化が目立つのは重要
な所見であるが,最も確実な所見は周囲の骨梁間への破壊性浸潤である。手足の小さ
な骨では組織学的に一見,軟骨肉腫様の異型がみられることがあるが,画像所見上,
骨皮質の線が切れ切れにでも円滑に追えて,骨外増生がみられない場合は良性とみて
よく,病変が骨皮質を破り軟部に浸潤している場合にのみ軟骨肉腫の診断をするのが
妥当であろう。胸壁過誤腫chest wall hamartoma(mesenchymal hamartoma of 
chest wall)は新生児・幼児の胸壁に生じる極めて稀な多房性・分葉状腫瘤で,ほと
んどは生下時より存在し,骨端軟骨に似る島状の軟骨と多胞性嚢胞が認められ,悪性
と間違われる場合があるが良性である。

画像所見 

図7

 手足の指骨に好発する。長管骨では骨幹端に発生し,骨髄腔に沿って長
軸方向に成長する。ときに多発する場合があり,多発性内軟骨腫(Ollier
病)では片側性に病巣が発生するものが多いが,両側性であっても左右非

図6 Enchondroma of hand

Grade 1 chondrosarcoma様の異型。