86 Ⅷ 骨腫瘍の病理

膜性軟骨肉腫periosteal(juxtacortical)chondrosarcomaは腫瘍性の軟骨が骨表面(す
なわち骨皮質表層)を浸食するように拡がる稀な病変で,骨軟骨腫にみられる骨性の
隆起を伴わない。

1-1-2 多発性骨軟骨腫 Multiple hereditary osteochondromas
多発例が全骨軟骨腫の約12%にみられ,その年齢分布・性比も単発例と同じとさ

れるが,実際には多発例は多発性遺伝性外骨腫multiple hereditary exostosisのこと
が多く,EXT遺伝子のうちEXT1もしくはEXT2の突然変異により,1)常染色体
優性遺伝,2)家族内発生,3)若年児にみつかる,4)他の骨格異常を伴う,5)単発
病変に比べ隆起・変形の程度がより広範になる,6)約10%に二次的悪性化がみられ
る,等の傾向がある。

単発・多発共に骨軟骨腫の軟骨には組織学的に多少の異型があるのが普通で,とき

としてgrade 1の軟骨肉腫にみられる程度の変化までをも含み得るし,一方,二次性
の軟骨肉腫のほとんどはlow gradeのため軟骨の組織学的所見のみでは鑑別困難な場
合があり,画像所見や肉眼像を含めて総合的に判断する必要がある。

1)青年期を過ぎてからの腫瘤の増大,2)疼痛の増強,3)1.5〜2cmを超える軟骨

帽,などが成人にみられた場合は悪性化の可能性を疑う。肉眼的にせよ顕微鏡的にせ
よ,病変本体から切り離された軟骨組織が周囲の軟部組織内に存在する時は浸潤とみ
るべきで,悪性と考えてよい。

単純X線像

MRI T1強調像

CT

MRI T2強調像

図3 骨軟骨腫の画像所見